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77話 ページ27

雨が降る中。

Aは鳴屋敷の道場で刀を振っていた。

いくら休暇とっているからと言っても、何があるか分からない。

救援要請が出されたら、いつでも助けに行けるように。

実弥を隣で守れるように。

と、日々精進を欠かさない。

柱になったのが十四歳、当時は今よりももっと弱かった。

それがどうして、皆が苦戦していた下弦の壱を倒せたのか、Aは未だに分からない。


『……』


実弥や煉獄ですら、柱になるきっかけだった討伐では、苦戦していたとも聞く。

Aは気がつけば鬼を斬っていた。

体が熱を持っていた。けどその代わり、物凄く速く動けていた気がする。

普段は体温は低めなのだが、あの時ばかりは熱かった。


あの日も今日のように、雷が鳴り響く、雨の夜だったのを思い出した。


Aはふと刀を振るう手を止めて、窓の外を見た。


『雨、降ってるね』

「A、ドウシタ?」

『雷生……、いや、私が初めて十二鬼月を倒した時を思い出して』

「アノ日カラ、六年ハ経ッタノカ」

『……うん』


雷生はAの隊服の上に体を休めて、あの日を思い出した。

外で稲光が光る。


「アノ日、稲光トAノ呼吸ガ、同時ニ光ッタ」

『そうだっけ?』

「ソウダヨ」


Aの霹靂一閃と、この稲光が光り、誰もが眩しさで目を背けたほんの一瞬。

鬼の頸が落ちていた。


「アノ時、確信シタ」

『何を?』

「Aハ、モット強ツヨクナルト」

『あっはっはっはっはっ』


Aは刀を握り締めて、笑い出した。

笑い出したかと思えば、今度は唐突に感情を消した。


『戯言も程々にしてよ、雷生』

「……A」


雷生は顔を上げた。

そこには冷たい瞳を浮かべたAがいた。


『私が、強い?』


Aは鼻で笑う。


『私が強かったら、今頃カナエだって、煉獄だって、死んでないんだよ』


刀を握っていない方の手から、血が滴る。

雷生はAを見上げたまま動かなかった。


『雷生、勝手なこと言ってんなよ』

「A、モシAガ弱ケレバ、音柱モ、ソノ嫁タチモ、アノ子モ、アノ子ノ仲間ラモ、生キテイナイ。
アノ時ヨリ、ズット、ズット、強クナッテイル」


Aは力を抜いた。

雨は、降り止まない。

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やぁと(プロフ) - 柚葉さん» コメントありがとうございます!優しい彼を描けて良かったです。ラストはすごく悩んでできたシーンなので、涙を流していただき感無量でございます。ここまで長々とお付き合い頂きありがとうございました!またの機会がございましたらよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月25日 20時) (レス) @page49 id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 完結おめでとうございます!実弥さん推しの私ですが、こんな実弥さん大好きです!ラストは涙流しながら読みました。 (2021年11月25日 19時) (レス) @page50 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
やぁと(プロフ) - 金平糖さん» 再びコメントありがとうございます!どうにか無事に完結を迎えられました!感動的なラストを金平糖様にお届けできて幸いです。長々とお付き合い頂きありがとうございました!またの機会がございましたら、その時もどうぞよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月25日 17時) (レス) @page50 id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
金平糖 - 完結おめでとうございます。最後の最後でどばーーーっと涙が… 本当に、完結おめでとうございます! (2021年11月25日 17時) (レス) @page50 id: 63ca64d519 (このIDを非表示/違反報告)
やぁと(プロフ) - 実弥&左馬刻&勝己LOVEさん» 原作とはかなり性格違ってるのでは?と申し訳ないと思いながら書いてるのですが、喜んでいただけて幸いです。これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月14日 23時) (レス) id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月27日 17時

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