検索窓
今日:8 hit、昨日:18 hit、合計:38,896 hit

64話 ページ14

風屋敷で休む準備を整えた二人は、縁側にて柔らかな日差しの中向かい合っていた。


『面白かったよ。
宇髄が……』

「ははっ、そうかィ」

『それで……』

「良いんじゃねェの」


実弥に沢山のことを話して、

実弥から沢山のことを聞いた。


約一週間の出来事を。


『ずっと皆に言われてたんだよ』

「まぁアイツらならなぁ」

『旦那が旦那なら奥方も奥方よって感じ』

「ははは」

『須磨さんとかまきをさんならまだしも、雛鶴さんも便乗されると思ってなくって』

「八方塞がりだったんかァ」

『そうなの!』


必死に伝えてくるAに、実弥は相槌を打つ。


そうしていく内に、日が暮れ。


Aと実弥二人で並んで食事を作って、

二人で仲良く食事に手を伸ばす。


『んー、美味し!』

「これも美味だぜ」

『舌に合って良かった』


大根と人参と長ネギを具材に白味噌を溶いたお味噌汁と白米。

カボチャを砂糖で煮詰めた甘煮や、白菜と大根と結び昆布の煮付け。それからキュウリのぬか漬け。

二人で作った、二人の夕飯。

それは、凄く美味しい。


話しながら食が進み、あっという間に完食すると、後は眠るだけだ。

Aは離れたくないとでも言うように、実弥の手に自分の手を繋げていた。

それを実弥も鬱陶しがることなく、お互い手を繋いでいた。

実弥の部屋の前。月明かりが二人を照らす。


『……ねぇ、実弥』

「あ?」

『生き残ろうね』


Aは実弥の手を両手で握りしめた。

その様子のAを、実弥は抱き寄せて、背中に腕を回した。


「やっぱり、辞める気は無いのか」

『……正直、私の後釜が育ってるのを見て、もう辞めてもいいかなって思ってる。
けど、今、煉獄や宇髄が抜けた穴は、すごく大きくて。
私まで抜けていいのかなって、思ってる』

「いいんだよ、抜けても。
俺がその分、お前たちを守るから」


実弥は必死にAを抱きしめる。


『抜けても、参戦したりすることもあるとは思うけど』

「しなくていい。鬼殺なんて忘れて、一般人として生きてていいんだ」


実弥のその言葉は切実な一言で。

Aと二人暫く抱き合っていた。

そこで、実弥は離れるとAの顔に手を当てた。


「A、鬼殺隊を辞めたら俺の帰ってくる場所になってほしい」

『あ……』

「そしたら、どんな敵がやって来ても必ず生き残るから」


Aはその言葉に、涙が止まらなかった。

そして頷きながら、


『抜けなくても、よろこんで』

65話→←63話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (92 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
235人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

やぁと(プロフ) - 柚葉さん» コメントありがとうございます!優しい彼を描けて良かったです。ラストはすごく悩んでできたシーンなので、涙を流していただき感無量でございます。ここまで長々とお付き合い頂きありがとうございました!またの機会がございましたらよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月25日 20時) (レス) @page49 id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 完結おめでとうございます!実弥さん推しの私ですが、こんな実弥さん大好きです!ラストは涙流しながら読みました。 (2021年11月25日 19時) (レス) @page50 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
やぁと(プロフ) - 金平糖さん» 再びコメントありがとうございます!どうにか無事に完結を迎えられました!感動的なラストを金平糖様にお届けできて幸いです。長々とお付き合い頂きありがとうございました!またの機会がございましたら、その時もどうぞよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月25日 17時) (レス) @page50 id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
金平糖 - 完結おめでとうございます。最後の最後でどばーーーっと涙が… 本当に、完結おめでとうございます! (2021年11月25日 17時) (レス) @page50 id: 63ca64d519 (このIDを非表示/違反報告)
やぁと(プロフ) - 実弥&左馬刻&勝己LOVEさん» 原作とはかなり性格違ってるのでは?と申し訳ないと思いながら書いてるのですが、喜んでいただけて幸いです。これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月14日 23時) (レス) id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月27日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。