55話 ページ5
堕姫の頸と、妓夫太郎の頸は同時に斬れた。
だが、宇髄とAは唯ならぬ気配に即座に動く。
『やばい、やばいよやばいよ』
Aは急いで宇髄の妻たちがいる場所に向かった。
「石黒様!!」
『伏せて!!』
Aは歯を食いしばって、衝撃を飛ばした。
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Aは誰もいないところで、胸を押さえて座り込んでいた。
向こうでは、善逸が騒いでいる声が聞こえた。
それはそうだろう。神速を二回も使っているんだ。折れていないわけがない。
『まぁ、あの子にしても頑張ったんだもんね』
出会った頃から泣きじゃくっていた善逸。
師範である桑島慈悟郎の下を出て、一度や二度しか会ったことがないが、いつも泣いていた善逸は覚えてないだろう。
ただ、上弦の鬼を一体、百年ぶりに狩ることが出来て、Aは漸くホッとした。
『カナエ、煉獄、守ったよ……』
Aはまだ夜が明けない空を見上げた。
少しづつ、呼吸が苦しくなってきた。恐らく毒が回ってきたのだろう。
『今回は、本当にヤバいかも……』
そろそろ目が霞んできた。
全身が爛れてきた。
恐らく妓夫太郎の血鬼術だろう。
『……実弥、会いたい……』
Aは夜空に浮かぶ月を見て願った。
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「っ、石黒はどこだ!」
禰豆子の血鬼術で解毒された宇髄は、周りを見渡す。
だが、目の届く範囲にAの姿は無く。
「石黒を探せ!!」
宇髄の言葉に、炭治郎たちも辺りを見ていた。
すると、善逸が耳を澄ませて音を聞きわける。
「あそこ!」
善逸が指差した先に、禰豆子は走っていき、その後を宇髄も追いかける。
Aは瓦礫と瓦礫の間に座り込んでおり、辛そうだった。
『あれ、来ちゃったんだ、ここに』
「Aさん、すぐに助けますから!」
『え?』
全身も皮膚が爛れている。
だが、禰豆子がAに触れると、
「ムッ!」
『嘘』
Aは驚いて、自分の体を見た。
皮膚が爛れていたのが、綺麗さっぱり無くなっていて。
『禰豆子ちゃん、ありがとう』
Aは優しく禰豆子を抱きしめた。
禰豆子もその温もりに、甘えるように抱きつく。
「お前も無事だったか」
『宇髄……その腕』
「まぁ、生きてる方が勝ちだし、鬼は討った。誰も死なずに、久しぶりに上弦を倒せた。
腕の一本や二本で済むなら、俺は差し出すぜ」
『ははっ、相変わらずド派手なんだから』
炭治郎が兄妹が散り散りになるのを見届け、全員が拳を空に突き上げた。
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やぁと(プロフ) - 柚葉さん» コメントありがとうございます!優しい彼を描けて良かったです。ラストはすごく悩んでできたシーンなので、涙を流していただき感無量でございます。ここまで長々とお付き合い頂きありがとうございました!またの機会がございましたらよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月25日 20時) (レス) @page49 id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 完結おめでとうございます!実弥さん推しの私ですが、こんな実弥さん大好きです!ラストは涙流しながら読みました。 (2021年11月25日 19時) (レス) @page50 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
やぁと(プロフ) - 金平糖さん» 再びコメントありがとうございます!どうにか無事に完結を迎えられました!感動的なラストを金平糖様にお届けできて幸いです。長々とお付き合い頂きありがとうございました!またの機会がございましたら、その時もどうぞよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月25日 17時) (レス) @page50 id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
金平糖 - 完結おめでとうございます。最後の最後でどばーーーっと涙が… 本当に、完結おめでとうございます! (2021年11月25日 17時) (レス) @page50 id: 63ca64d519 (このIDを非表示/違反報告)
やぁと(プロフ) - 実弥&左馬刻&勝己LOVEさん» 原作とはかなり性格違ってるのでは?と申し訳ないと思いながら書いてるのですが、喜んでいただけて幸いです。これからもよろしくお願いしますm(*_ _)m (2021年11月14日 23時) (レス) id: a03889f26b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月27日 17時