元柱だった隊員・2【不死川実弥】

71話 ページ21

Aの足もほぼ回復していた。

相変わらずしのぶには引かれた。


「引かない人は居ないと思いますよ」


と、言葉を頂いた後に、本部に訪れた。

そこでは御館様にも喜ばれ、無事にAは休暇が取れた。

それから二人は街であれこれ買い物をする前に食事処に寄った。


『実弥は何食べるの？』

「……天そば。おめェは？」

『んー、お味噌汁定食で』


二人がそれぞれ頼むと、お冷を片手に喋っていた。


『休暇取れたから、屋敷からあれこれ移動させなきゃなぁ』

「部屋は好きに使えや」

『ありがとう』


Aは髪の毛を耳にかけて、周りを見た。


『ねぇ実弥、面白いこと、起きそうだよ』

「ァ？」


Aが顎で示した先を見ると、そこには挙動不審のように辺りを見る中年がいた。

実弥も同じように辺りに視線を泳がせた。


『まぁ食事の時間さえ邪魔されなければ私はいいよ』

「正気かァ？」

『常日頃から鬼を相手していると、人間なんてただの雑魚よ』

「そう言って池に浮かんでたのは誰だァ？」

『あれは不可抗力ってことで』


Aが笑うと、実弥も辺りを警戒しつつ、Aとの時間を優先した。

当然、二人は日輪刀を持っている。

いきなり鬼が現れても勿論討伐可能だ。それが人間だとしても容赦はしない。


「どうするんだ？」

『何が？』

「これからだ」

『時間があれば自分の屋敷で後釜を育てようと思う。
それ以外はまぁ引きこもって仕事するよ。代わりに近辺に鬼が現れたら容赦無く斬るけど』

「大人しくしねぇのかよ」

『随分と大人しくなってると思うけど？』


Aが笑っていると、二人の注文した食事が運ばれてきた。

天そばにのってる天ぷらは種類豊富で美味しそうだ。Aの味噌汁も具だくさんで、食欲が出る。


『いただきます』

「いただきます」


二人して手を合わせると、食事を食べだした。

こうしてゆっくりする時間も、今日で終いだ。

明日から実弥は忙しく任務が入っている。

この残りの時間をどうしようか、と二人は口にせずとも考えた。

72話→←70話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す