元柱だった隊員・2【不死川実弥】

53話 ページ3

――みんなごめん、禰豆子……

「謝らないでお兄ちゃん、どうしていつも謝るの？」


ここは炭治郎の夢だ。

今炭治郎に訴えているのは、まだ人間だった頃の禰豆子だった。


「貧しかったら不幸なの？
綺麗な着物が着れなかったら可哀想なの？
そんなに誰かのせいにしたいの？
お父さんが病気で死んだのも悪いみたい」


禰豆子の言葉の影響力はとても強かった。

まるで不意打ちで殴られているみたいに。


「精一杯頑張っても駄目だったんだから仕方ないじゃない。
人間なんだから。誰でも…何でも思い通りには行かないわ」


すると、優しく吹いていた風が、徐々に強くなっていく。


「幸せかどうかは自分で決める。
大切なのは今なんだよ。前を向こう。一緒に頑張ろうよ、戦おう」


次に訴えているのは、鬼になった禰豆子だった。


「謝ったりしないで、お兄ちゃんならわかってよ。
私の気持ちを、わかってよ」


涙を流す禰豆子に、炭治郎は目が覚めた。

辺りは残骸が沢山で。


(――昔の夢か…？あれ？ここは…俺は…)

「何だ、お前まだ生きてんのか。運のいい奴だなああ」


炭治郎が顔を上げると、先程まで戦っていた妓夫太郎が立っていた。


「まあ運がいい以外取り柄がねぇんだろうなあ。可哀想になあ。
お前以外の奴は皆もう駄目だろうしなああ」


炭治郎は驚く。


「猪は心臓を一突き。
黄色い頭は瓦礫に押し潰されて苦しんでるから死ぬまで放置するぜ。
虫みたいにモゾモゾしてみっともねえよなああ」


伊之助は背中と胸から血を流して屋根の上で倒れていて、

善逸は瓦礫の中で抜け出そうと動いていた。


「男の柱も弱かったなあ、威勢がいいだけで。
毒にやられて心臓も止まって死んじまった、お陀仏だ。
女の柱も弱かったなあ、余裕そうにしていた割にはやっぱり力が足りねえ。
瓦礫の中で悶えてたみてぇだけど、俺が毒を与えたことに気づかないまま死んだ」


左腕が傍に転がっている宇髄も至る所が傷だらけで、

Aは瓦礫の中で全く動いていなかった。


「みっともねえなあみっともねえなあ。
お前ら本当にみっともねえなあ、特にお前は別格だ」


妓夫太郎は、炭治郎から禰豆子に目を向けた。

そこには箱から出ていた禰豆子がいて、それを血縁だとも知られていた。

だが、妓夫太郎は動けない炭治郎を殺さずにいた。

その事が炭治郎には謎だった。

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