6話 ページ6
Aside
中学一年、初夏。
「なァ、今度、料理教えてくれねぇか」
『………え?』
神様、本日は私の命日でしょうか。
事の発端は、春の遠足だった。
席が隣同士なのは許せるのね。
ただ、私の班が推ししかいないのはどういうことだ。
親友の宇髄と、推しの不死川くんと、推しの親友の伊黒くんと、神様の胡蝶さん。
えっ、こんな推しまみれの中に私という存在が入っていいのだろうか。
後ろから刺されたりしないよね?え!?
こ、怖い。
『ねぇなんなんこの班、私に死ねと、ああそう望むんなら今すぐ首掻っ切って死ぬぞ』
「濱〜〜、現実に戻ってこ〜い」
そう言って宇髄は私の耳を引っ張った。
『痛い痛い痛い痛いちぎれるちぎれるちぎれる!!!
私を殺す気でやっただろおい!!』
「殺す気はねぇけど、耳をちぎる気ではいた」
『おまっ、おまっえ!!!』
隣でギャハハと笑う宇髄を殴りたいと思いながら耳を摩っていた。
ただいま遠足のお昼ご飯中でございまして。
はい。
察しました?
推しの弁当を拝めるわけですよ。
普段は給食なんでね、その人の好みを知るのは至難の業。
推しのお弁当は、あら素敵、とても健康的なご飯です事。
私のご飯は昨日のお夕飯をぶち込んだものなんですが。
そんな時でした、冒頭の一声が出たのは。
「なァ、今度、料理教えてくれねぇか」
『………え?』
な、なんて????
えっ、ねぇ、なんて言ったの今。
今の何語ですか。
『え、あ、えと、あの……』
「わりぃ、急だったな」
シュンってしないでくれ。
すまない、私の頭の中がミキサーで混ぜられてるんだ。
『あ、いや、あの、それは良いんですけど……』
「あらあら」
カナエさん、笑ってないでのほほんとしてないで、なんか、助けてください。
推しを目の前にすると言語化できなくなるんですよオタクは!!!!
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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月1日 23時