40話 ページ40
不死川実弥side
ことを抱っこしてるAは、とても綺麗だった。
どこか緊張した様子でも、ことを見つめてる表情は母親そのものだった。
今は俺の腕の中にいること。
誰に似たのか産まれたての癖して、大人しい。
『可愛い』
Aはそう言って優しくことの頬を突く。
こともそれが不愉快じゃないようで。
「可愛いだろ」
『赤ちゃん初めて見た』
「ははっ」
『ん?違う、初めて触れただ』
Aはそう言って、ことの手に触れる。
『柔らかいなぁ……』
「モチモチしてるよな」
『実弥にも、こんな時期あったんだね』
「おいコラ、どういう事だ」
俺がAを見ると、Aは首を振りながら笑う。
『んーん、なんでもない。
ただ、この子の行く末が楽しみになった』
「行く末って、お前今いくつだよ……」
急に昔の人のような言葉でAは笑った。
俺も釣られて笑うと、ことも俺たちの笑い声に声を上げた。
「楽しいのかもね」
「そう、だといいな」
『……』
Aはただ無心で、ことの頬を撫でていた。
『……』
「A?」
『可愛いなぁぁぁぁ』
これは、って思った。
流石に母さんがいるから殺してるようだけど。
こいつのこの反応は推しに悶えてる時だって宇髄が言ってた。
『可愛いよ、えっ、めっちゃ可愛い……。
赤ちゃんってこんな可愛いのね……』
「ま、夜は想像を絶するほど夜泣きしてるけどな」
『あっ、夜泣き!凄い!』
「声でけぇよ」
『あ、ごめん』
Aは一度引っ込めた手を、ゆっくりことの頬に当てた。
指の背で優しくことの頬を撫でてて。
『………大きくなってね、ことちゃん』
優しく微笑んで、ことにそう言った。
その表情と、声色を聞いて、俺は実感する。
(――Aが好きだ)
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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月1日 23時