34話 ページ34
Aside
その日は夕飯を食べながら、お父さんともお話して、実弥に家まで送ってもらった。
『ありがとう』
「気にすんな」
『うん』
「それに、夜道を彼女一人で歩かせるわけにいかねぇだろ」
『うっわ、イケメン』
「茶化すな」
私は思わず照れた。
そうなんですよ、不死川実弥はそういう奴なんです。
簡単に人を誑かす!!
私の住んでいるお家に着いて、私たち二人の時間は終わった。
『それじゃ、またね』
「おう、またな」
私がドアを開けると、
「A」
『ん?』
実弥に呼ばれて、振り返ると、
「……」
『っ……』
唇に温もりが触れた。
「へっ、ごちそーさま」
そう笑う彼は、あまりにもカッコよすぎて。
『ちょ、今……』
キスしたことが衝撃だった。
さすがに私、こう見えてもファーストキッスなので。
『さ、実弥!』
「兄弟を除くと、俺のファーストはAだけど、Aは?」
『初めてに決まってんでしょうが!』
あまりにも恥ずかしくて、ちょっと強めの返し方をしてしまったけど。
それでも、
「良かった」
あなたは心底嬉しそうに笑って、
「またな」
って、帰っていこうとした。
負けず嫌いの私は、やられてばかりじゃ気に食わない。
だから、
『実弥!』
「ん?」
私は実弥に抱きついた。
「っ……」
『今日は本当にありがとう』
離れてしまうのが寂しい。
けど、実弥には帰るお家がある。
実弥の帰りを待ってる人たちがいる。
私は実弥の匂いを十分に吸って、離れる。
『またね』
「ンのやろ」
『へへっ、倍返し!』
そうして私たちは最後に、引かれ合うようにもう一度触れるだけのキスをした。
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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月1日 23時