30話 ページ30
Aside
休み時間。
私と不死川くんは目線を合わせて、少し離れた所に向かった。
この前告白されたところじゃなくて、家庭科室の前にある池を見に来た。
「宇髄に言ったのか?」
『まぁ、私が口滑ったようなもんだけどね』
「はは」
『伊黒くんには言ったの?』
「あぁ」
『やっぱり二人も仲良いんだね』
「そっちもな」
私たちは池の周りから家庭科室に向かう。
そこは休み時間、人が滅多に来ない場所だから、すごく静かだ。
「A、今度の休み、ウチに来ないか」
『いいの?』
「あぁ、別にいいよ。
お袋も休みだし」
『……家族に挨拶したいから、行くね』
私は前髪を触りながら言うと、彼は笑ってくれた。
うん、推しの笑顔尊い。
「そう言えば、Aは宇髄の事、名前で呼ばないんだな」
『お互い、たまーに呼びあってるよ』
「そうなのか?」
そこで推しは笑った。
ん?なんだ子のイタズラ思いついたような笑みは。
「俺のことは名前で呼ばないのか?」
『…………え』
「なんでそんなに間があるんだよ」
いやいやいやいやいやいや、推しを名前で呼ぶ。
『え?』
「どうした」
不死川くんは笑う。
『そっか、そうだよね。』
「ん?」
『んーん、なんでもない』
私は息を吐いて彼の顔を見た。
あー、とても緊張する。
『………実弥くん』
「なんだ?」
『うっっっ、首かしげるのは狡い!』
可愛いんだよあんた!!
顔小顔で可愛いんだから!!!
そう簡単に首かしげるな!!
尊い!!!!!
「大丈夫か?」
『彼氏様が尊すぎて心臓が破裂しそう』
そう言うと、彼は笑う。
とても、優しい表情で笑ってた。
愛されてるな、と思う。
お父さん、お母さん。
別にね、私は何かが欲しかったわけじゃないんだよ。
ただね、こうして、隣にいてくれるだけで。
それだけで、私は嬉しかったの。
そう思った瞬間、涙が浮かんだ。
涙が浮かんで、声に出ないように堪えてると、不死川くんが頭を撫でてくれた。
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作者名:やぁと | 作成日時:2021年10月1日 23時