原色Ａ型男子図鑑→y

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「とりあえずは、週末の結納なんだけど。
それはなんとか理由をつけてパスする。
腹違いの兄弟がいるって話はもうしたと思うんだけど。
うちの会社で取締役をしてるんだけど。」

…知ってる。

この間、北山さんがこっそり教えてくれたから。

取締役だけど、全然仕事をしなくて遊んでばっかで、その人が跡を継ぐと確実に会社は潰れるだろうって。

でも最近、横尾さんが後継者候補に浮かび上がってきてから、かなり焦ってるらしいってことも。

「結納はその兄に代わってもらうのもアリかもね。」

横尾さんは真顔であくどい企みを口にする。

…ヤバい。

こういうギャップにも、私の心は鷲掴みにされてるんだけど！

腹黒な横尾さんも私好みなんだから、もう始末に負えない。









「それから、今日はAとのこれからの話もしたくて。」

「…これから？」

「そう。
きちんと付き合い直したいから、Aと。」

私はまだ横尾さんのことが好きだから、それはうれしいんだけど。

内心、不安で仕方ないんだ。

放置されたと思ったら、仲を引き裂かれたりだとか。

そういう精神的に厳しい恋愛は、もう嫌だから。

「正直に言うと…、今まではAとどう付き合っていいのかわからなかったから、恋人らしいことは何もできなくて。
なのにあんな形で別れることになったから。
だから、一からきちんと付き合いたい。」

「それは、本当の横尾さんと？」

「そう。
素の俺は、性格も悪いし口も悪いし。
Aには愛想つかされるかもしれないけどね。」

そう言いながら目を細めて微笑む横尾さんは、好き以外の何物でもなくて。

やっぱり私は横尾さんを嫌いになるなんて無理だった。









「もう一度、俺と付き合ってくれませんか？」

改めて、そう尋ねてくれた横尾さんに、胸がいっぱいになった私は、

そのまま抱きついてしまった。

今までは横尾さんがあまりに神々しすぎて、そんなこととても出来なかったけど。

本当の横尾さんを知ったら、急に距離が縮まったような気がして、少しだけ大胆になれた。

「よろしくお願いします。」

そう言葉に出したら、今まで心の中で燻ってたものが、一気に消え去った。

本当に私ときたら、なんて単純な人間なんだろう。

横尾さんと付き合ってからの私は、こんなことばかり繰り返してるような気がする。

だけど、これがもう最後だよ。

だけど今後、また別れるような危機があったら、その時は本当にもう、だめだと思うから。

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