26 ページ26
急に歩くスピードが遅くなった私に、横尾さんは苦笑いで立ち止まった。
「あー…、言い方悪かったかもね。
前にも言ったけど、何もしないから。
だから、心配しないで。」
柔らかい声でそう告げると、さっきよりもゆっくりと歩き始めた。
そっか…、少しだけ残念。
カップルが温泉旅館に泊まるのに、何もしないとか。
ちょっと、もったいなくはあるよね。
「…また、全てが片付いたらゆっくり来よう。
Aと一緒に行きたい場所は、まだまだあるから。」
横尾さんはそんな、私が喜ぶような言葉をスラスラと吐く。
前までは理性的でクールで、固い話ばかりだったのに。
最近の横尾さんは、少しだけデレを見せるようになってきた。
しかも優しげに微笑みながら。
…なんだか、不思議な感じ。
旅館で美味しい料理も戴いて、いざ温泉！
カップルの定番、大浴場の前で待ち合わせ。
意外にも私の方が先に出て、ソファーでスマホをいじりながら横尾さんを待ってた。
温泉…、それはなんて淫靡な空間なんだろう。
女湯には一人で来ている人が何人かいて、それはきっと彼氏と一緒に泊まってるわけで。
この後めくるめく夜が待ってるんだろうなあ、とか不謹慎な想像をしながら岩風呂に浸かっていた。
「ゆっくりしておいで。」
横尾さんはそう言ってくれたけど、３０分ほどで出てきちゃった。
変に気が焦って、ゆっくりなんかしていられなかったから。
しばらくして、
「待たせちゃった？」
そう言いながら、隣に腰掛けてくる横尾さんの姿に、私の胸は最大級に高鳴り始めた。
…てか、丹前に浴衣って！！！
こんなに似合う人っている？
まさに、横尾さんにピッタリなんですけど！
なのに横尾さんは目を細めて、
「Aの浴衣姿って新鮮。
すごく似合ってる。」
なんて、私を褒めてくれるけど、
横尾さんの方が格段に似合ってますから！！！
部屋に戻ったら案の定、布団は微妙な位置で二組敷かれていた。
そんな様子を見ても、横尾さんは顔色ひとつ変えない。
行き道で買ってきたアルコールやおつまみを取り出しては、宴会開始。
しばらく飲んでて気付いた。
今日の横尾さんはピッチが早い。
いつもはゆっくり、酔わない程度に飲んでるのに、今夜はいきなり飛ばしてる感じ。
とうとう持参してきたアルコールも無くなってしまい、
「ロビーの隣の店、まだやってたっけ。」
そう言って、横尾さんは立ち上がった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 991人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鈴木さん(プロフ) - 失礼しました、素敵な作品です。これからも応援してます。 (2020年12月18日 4時) (
レス) id: 3afdd984d0 (このIDを非表示/違反報告)
鈴木さん(プロフ) - 初めまして。とても面白くて内容もスっと入ってきて幸せな気持ちになれました。横尾担ではないのですがとっても素敵なお話しで作者様も、横尾さんご本人までも好きになりました。他の小説も楽しませていただきます。素敵な咲く日ありがとうございます。 (2020年12月18日 4時) (レス) id: 3afdd984d0 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - ゆかぺんさん» ありがとうございますm(__)m長い時間かかりましたけど、お付き合いいただいてありがとうございました！またAB型も読んでやってください♪ (2018年12月27日 0時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - 横尾渉さん» お返事遅くなりまして申し訳ないです(/ω＼)とうとう完結させていただきました。読んでいただいてありがとうございました！ (2018年12月27日 0時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
ゆかぺん(プロフ) - 完結おめでとうございます。ずーっと読ませていただいて、最後はどうなるのかと思いましたが、ハピエンで良かったです。他の作品のkとmも読ませていただいてました。ありがとうございました。 (2018年12月24日 9時) (レス) id: a438011908 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わかめ
| 作成日時：2018年7月8日 3時
