その軌跡を語るなら

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《Aも語る》

驚いた。
このたった3ヶ月で玲子の彼氏が変わっていたのに驚いたが、篤人君が、なんだかちょっとすごい人みたいで、それにもとても驚いた。
玲子が話す、日本で大人気のウッチーと、ドイツで私が見ていた篤人君とに、ものすごくギャップを感じるが、でも、人気があるのは、まあ、解る気もする。
かっこいいもの。

「そんなにすごいの？」
「すごい、すごい。アイドルみたい」

玲子が、麻也ちゃん絡みで録画していた物に篤人君も映ってると言うので見せて貰う。
空港で、女の子に声をかけられたり、インタビューで恋愛に関する質問をされたり、確かに、アイドルみたいだった。

後でバレてキャンキャン言われるよりも、さっさと白状しておこうと、玲子に、この3ヶ月、ドイツで起こった事を話した。
彼女は、切れ長の涼やかな眼をこれ以上無理という位に見開いて、珍しく静かに言った。

「やっぱ、双子かも…」
「でしょ？」
「あ！ じゃあさ、さっきのウッチーのインタビュー！」

もう一度再生する。

【オレも早く結婚したいな。
今は彼女いないから、
まずは彼女を作らないとね。
一般の人がいいな。】

「これっ！ こんな事言いながら頭ん中ではあんたの事考えてるとか？！」

嘘でしょー・・・ って。

「どうやって騙したのよ(笑)？」
「…全部、話したよ？ それでもって言うんだもの…」
「あんた、日本中のウッチーファンに呪い殺されるよ」

あの晩の篤人君を思い出す。
あの時彼の気持ちを受け入れなくて良かった。知らなかったとはいえ、こんなにマスコミに騒がれる人なんて、無理だ。

「で？ どうなのよ」
「…正直、嬉しかった。こんなあたしでも好きになってくれる人がまだいるんだなって」
「…A」
「…とても真剣に見えたし、…手がね、優しくて、あったかかったの」
「うん」
「でも、それだけ 」
「…それだけって？」
「さっきの見て思った。あたしじゃ、無理」

あんなに沢山の人に応援されてる篤人君を、私は受け止められない。
それに、私では、彼の名前に傷がつく。

「大体、あたしは今、好きだの何だの言ってる場合じゃないって。名前が変わる、外国に住む、仕事も変わる、ね？」
「…うん」
「頑張らないといけないの」

宿題の答えはもう決まっていた。
ドイツで篤人君に会ったら、ちゃんと伝える。
私の事なんか忘れなさいって。

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