その軌跡を語るなら

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「で、あさってって何があんの？」

Aに聞かれて、まだ話していなかった事を思い出した。

「サッカー、観に行くから」
「サッカー？ 玲、サッカー好きだったっけ？」

はい、もちろんニワカでございます。3月にたまたま観た日本代表の試合で、可愛い子をみっけちゃって。てへっ。
Aにサッカー雑誌を持って来て、見せる。

「この子、吉田麻也ちゃん」
「まやちゃん？ 女子？」
「バカもん！ よく見ろ！」
「…可愛い、かな？」
「えー、このキュートさがお前には解んないか！」

こんな顔なのに可愛い。
189センチもあるのに可愛い。
点を取られて項垂れる麻也ちゃんに、お姉さんは母性本能くすぐられました。
そんで、生麻也ちゃんを見たい一心で申し込んだ、オージー戦のチケットの抽選に当たるという、正にビギナーズラック。
もうあたし、一生分のラッキーを使い果たしたわ。
でも悔いなしっ！

「…って、聞いてる？」
「聞いてるよ、ナマね」

その時、雑誌をめくっていたAの手が止まった。

「ん、どした？」

人って、本当に二度見すんのね。

「…玲子さん？ この人は双子ですか？」
「ウッチーじゃん。…なに、双子って？」
「…ウッチー？ …この人とおんなじ顔の人がドイツでサッカーしてるよ？」
「は？ あんた大丈夫？ おんなじ顔じゃなくて、おんなじ人だよ」

・・・どうやらAは、シャルケはシャルケ、代表は代表って思ってたみたい。

「代表の選手は、普段自分のチームでサッカーしてて、代表戦の時に集まって、って、聞いてる？」

聞いてないね？
何だか、心ここに有らずって感じだけど。

「…あさってのって、そのウッチーも出るの？」
「出るよ、多分。…なに、ドイツでファンになったの？ ウッチー可愛いもんねー」

あ、じゃあ、麻也ちゃん絡みで録画してたやつにウッチーが映ってるのがあるから見せてあげよう。

「あんたもサッカー詳しくないから知らないと思うけど、ウッチー、すごい人気あんだよ」
「…そんなにすごいの？」
「すごい、すごい。アイドルみたい」

だから、その後、Aからドイツでの話を聞いて、あたしがどんだけ驚いたか解る人いる？
いるわけないわ。
だって、このウッチーが、このAをっ！？
雑誌を見ながら、このウッチーが、と何度考えても信じられない。

「あんた、日本中のウッチーファンに呪い殺されるよ」

間違いない。

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