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《玲子だって語る》
ウッチーとAがドイツでそんな事になってるって、もちろんあたしは知らなかったから、6月4日のオージー戦を観に行くってAに言った後に、あの子から話を聴いて本当に驚いた。
あのウッチーが、このAをっ?!
あたしとそのAは、子供の頃からずっと一緒で、彼女が結婚した後も、何も変わらなかった。
住む所が近くなった事もあり、最初の頃は、新婚さんの所へよく行っていた。
崇史さんは優しい人で、嫌な顔ひとつせずにあたしを迎えてくれた。
あたしたちは周りから、双子とか、パピコとか言われる位、一心同体だった。
何も言わなくても、お互いの考えてる事が解ったし。
まあ、そんな事は、今はいいや。
ただ、それほど密接だったあたしたちだが、去年の秋にAが流産した後、少しだけ疎遠になっていた。
仕事がとても忙しく、あたしが東京にいない事も多かったから。
もちろん、全く連絡しなかった訳ではないが、彼女の異変に気付ける程の回数ではなかった。
何より、連絡なんかしなくてもあたしたちはつながっているし、さすがに、何かあれば言ってくると、思っていたし。
でも、違った。
Aは誰にも何も、あたしにすらその辛い日々の事を黙っていた。
3月になったら、少し時間に余裕が出来るからとメールをしたが、Aから返信はなかった。
電話もしたが、彼女は出ない。
あの夜はとても寒かったが、あたしの胸がざわついていたのはそのせいではなかった。
明日、行ってみようかなと、考えていた時、玲、と、呼ぶ声が聴こえた。
虫の知らせとか、第六感とか、色々呼び方があるそれに、あたしはタクシーを飛ばした。
そして、Aのマンションの前で、血だらけの彼女を見ることになる。
ドイツから帰国したAは、随分と元気になっていた。
うちに連れて来て、お土産のソーセージを貰う。
「え? ビールは? ドイツって言ったらビールに決まってる! で、ビールは?」
「あー、うるさい! あんな重い物、手荷物に出来る?」
「…楽しみにしてたとよ、おいら(涙)」
「別便で送ってるから。そのうち届くよ」
先に言えよ! ふんっ。
「とりあえず、あさっては空けといてくれたよね」
「うん、明日は弁護士さんと会って、届けを出しに行くから」
「…明日、出すの?」
「多分ね。早い方がいいの、会社の手続きとかもあるし」
「…そうだね」
Aは、もう前を見ている。
前と変わらず、あたしの自慢の美しい親友がそこにいた。
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馨子(プロフ) - リオさん» リオ様、コメントありがとうございます。仰る通り、篤人さんは何だか悲恋の匂いがしてしまうのです。時折見せる、物憂げな表情のせいかしらと思います。これからも、楽しんで頂けるよう、更新頑張りますね!f(^^;) (2014年1月15日 7時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
リオ(プロフ) - 初めまして。素敵なお話をありがとうございます、気付けば一気に読んでしまっていました。難しい恋、切ない恋、大人な恋……どうして彼はこんなにも似合うのでしょうね!まだまだ前途は多難な様ですが、これからも楽しみにしております(*^^*) (2014年1月15日 3時) (レス) id: 28f69f1789 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - 星さん» 星様、コメントありがとうございます。ピーコートのくだりは私も書きながら少し切なくなりました(笑)。自画自賛ですね…。読んで下さる方の妄想をいかに引き出すか、余り細かく描写しても良くないですし…。続きも楽しんで頂けるよう、頑張りますね。 (2014年1月12日 7時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
星(プロフ) - 初めまして。もしかしたらこんな切ない想いをこんな恋をしているのかも…と妄想しつつ(笑)一気に読んでしまいました。内田くんがヒロインの赤いピーコートの後ろ姿を見て、切なくなる想いにきゅうとなりました…。素敵な大人のお話ですね。続き楽しみにしています。 (2014年1月12日 2時) (レス) id: 59223def46 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - 空さん» 空様、コメントありがとうございます。逆風、吹いてますが、見守ってやって下さいませ。これからも楽しんで頂けるよう、頑張ります(*^^*) (2014年1月9日 22時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:馨子 | 作成日時:2013年11月30日 1時