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《Aがついに語る》
3年、販売店で営業をした。
月間の販売台数で、何度か支店長賞も貰った。
でも、私はもっと頑張りたかった。
入社3年を過ぎて、社内のキャリアアップ制度を利用出来る資格を得た私は、何度目かの選考で広報への異動となった。
仕事は楽しかった。
新車の試乗をしたり、モーターショーのブースに入ったり。
もちろん自動車メーカーだから、車を売る事が一番だが、フロントとは違う業務が新鮮で楽しかった。
社内のシステムが変更される事になり、私がうちの部署の担当になった。
ただ、私はPCとか、そのツールとかにとにかく疎く、システムの開発会社の担当者を困らせた。
でもその人は、根気よく、親切に私にアドバイスやレクチャーをしてくれた。
それが、村上 崇史だった。
そして、私たちがお互いに大切な存在になるには、それほど時間は必要なかった。
結婚しても、彼は変わらず優しかった。大好きだった。
毎日楽しくて、幸せだった。
だが、その年の秋に母が自宅で倒れ、休みで在宅だった父が直ぐに救急車を呼んで搬送したが、意識が戻ることはなく、1ヶ月後、そのまま息を引き取る。
ひとりになってしまった父が心配で、私は、ちょっとした時間を見つけては実家へ顔を出した。
崇史さんもそれに何も言わなかった。ただ、私の身体を心配してくれた。
正直、仕事と自宅と実家と、キツい事も多かったけど、私は頑張った。頑張っていたつもりだった。
「ところが、今度は父に癌が見つかって」
篤人君は、黙って私の話を聴いている。
見つかった時にはもう、父の食道に出来た悪性の腫瘍は、どうすることも出来ない状態だった。何ヵ所か、転移もしていた。
姉は、私は悪くない、悪いの病気であり、健診を受けていなかった父の方だと言ってくれたが、私は自分を責めた。一番近くにいたのは私だったのだから。
病室にPCを持ち込み、大好きだったコロンボのDVDを一緒に見た。
子供の頃に戻った様で、懐かしくて、切なかった。
そして、母が亡くなった僅か10ヶ月後に、父も母の元へ旅立った。
私は、疲れきっていた。
そんな時、私の妊娠が判明し、崇史さんはもちろん、義理の両親も喜んでくれた。
私もとても嬉しかった。
疲弊した心が、息を吹き替えしたようだった。
だが、その幸せも長くは続かない。
突然の激しい腹痛と出血だった。
たった10週足らずで私の赤ちゃんは流れてしまった。
黒い影はまだ私を離してくれなかった。
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馨子(プロフ) - リオさん» リオ様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。仰る通り、篤人さんは何だか悲恋の匂いがしてしまうのです。時折見せる、物憂げな表情のせいかしらと思います。これからも、楽しんで頂けるよう、更新頑張りますね！f(^^;) (2014年1月15日 7時) (
レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
リオ(プロフ) - 初めまして。素敵なお話をありがとうございます、気付けば一気に読んでしまっていました。難しい恋、切ない恋、大人な恋……どうして彼はこんなにも似合うのでしょうね！まだまだ前途は多難な様ですが、これからも楽しみにしております(*^^*) (2014年1月15日 3時) (レス) id: 28f69f1789 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - 星さん» 星様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。ﾋﾟｰｺｰﾄのくだりは私も書きながら少し切なくなりました(笑)。自画自賛ですね…。読んで下さる方の妄想をいかに引き出すか、余り細かく描写しても良くないですし…。続きも楽しんで頂けるよう、頑張りますね。 (2014年1月12日 7時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
星(プロフ) - 初めまして。もしかしたらこんな切ない想いをこんな恋をしているのかも…と妄想しつつ（笑)一気に読んでしまいました。内田くんがヒロインの赤いピーコートの後ろ姿を見て、切なくなる想いにきゅうとなりました…。素敵な大人のお話ですね。続き楽しみにしています。 (2014年1月12日 2時) (レス) id: 59223def46 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - 空さん» 空様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。逆風、吹いてますが、見守ってやって下さいませ。これからも楽しんで頂けるよう、頑張ります(*^^*) (2014年1月9日 22時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：馨子
| 作成日時：2013年11月30日 1時
