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《美也子が語れば》
私と妹のAは、二人姉妹だ。
7歳も年が離れているので、小さい頃から本当によく彼女の面倒をみてきた。
私は彼女が可愛くて仕方なくて、彼女も私にとてもなついていた。
成長しても仲の良い姉妹だったと思う。
私がフィリップと結婚しても、2003年にドイツへ渡るまでは、割とまめに連絡を取り合っていた。
ユリアンの事も、とても可愛がってくれた。
私が日本を離れてしまったから、両親の事は自分が面倒をみるつもりでいたようだ。
だから、2011年に母を、そして昨年父を、立て続けに亡くした時は、彼女は本当に憔悴していたし、彼女の身体にも大変な負担をかけた。
私はAに申し訳ない気持ちで一杯だった。
何かで彼女の役に立てるなら、出来る限りの力になろうと思った。
二人で頑張って生きる事が、両親の供養になるとも思った。
だから、今回、彼女をデュッセルドルフへ呼んだ。
とりあえず、ビザ無しで滞在出来る3ヶ月、Aをここへ置きたいとフィリップに頼んだ。
彼は、全く構わないと、快諾してくれた。
優しい夫に、本当に感謝している。
ここでは、Aには何も考えず、ただ、のんびり過ごして欲しい。
ユリアンの宿題じゃないけど、《月日が薬》と言うじゃない?
時間が癒してくれる事もある。
両親の事だけでなく、この1年半の間、彼女には辛い事が多すぎた。
もう、一生分の不幸が全て詰まったような1年半だった。
でもね、だからお姉ちゃんは、もうAにはこれ以上の苦しみはやって来ないと思うし、来るはずないと思ってる。
Aがブルーの服を着て、階段を降りて来た。
リビングで待っていたユリアンは、それが自分の叔母なのに、一瞬声が出ない程見とれていた。
“私の小さなユリアン″が、女の人をそんな風に見る程成長したかと思う。
少し寂しくもあるが。
「ユリアン? A、綺麗ね?」
「うん…。ママ、心配しなくても大丈夫だよ? パパから悪い虫が付かないようにちゃんと見張れよって言われてるから」
何を言ってるんだか、フィルは。
「お待たせ。ねぇ、変じゃない?」
ユリアンと一緒に首を振る。
「A、すっげきれー!」
「ほんと? でもユリアンもカッコいいわよ」
まあね。
母親の私が言うのも何だけど、確かにユリアンはスーツがとても似合ってるし、そして、姉の私が言うのも何だけど、あなたはすごく綺麗です。
悪い虫は困るけど、素敵な虫ならいいと思うわ。
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馨子(プロフ) - リオさん» リオ様、コメントありがとうございます。仰る通り、篤人さんは何だか悲恋の匂いがしてしまうのです。時折見せる、物憂げな表情のせいかしらと思います。これからも、楽しんで頂けるよう、更新頑張りますね!f(^^;) (2014年1月15日 7時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
リオ(プロフ) - 初めまして。素敵なお話をありがとうございます、気付けば一気に読んでしまっていました。難しい恋、切ない恋、大人な恋……どうして彼はこんなにも似合うのでしょうね!まだまだ前途は多難な様ですが、これからも楽しみにしております(*^^*) (2014年1月15日 3時) (レス) id: 28f69f1789 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - 星さん» 星様、コメントありがとうございます。ピーコートのくだりは私も書きながら少し切なくなりました(笑)。自画自賛ですね…。読んで下さる方の妄想をいかに引き出すか、余り細かく描写しても良くないですし…。続きも楽しんで頂けるよう、頑張りますね。 (2014年1月12日 7時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
星(プロフ) - 初めまして。もしかしたらこんな切ない想いをこんな恋をしているのかも…と妄想しつつ(笑)一気に読んでしまいました。内田くんがヒロインの赤いピーコートの後ろ姿を見て、切なくなる想いにきゅうとなりました…。素敵な大人のお話ですね。続き楽しみにしています。 (2014年1月12日 2時) (レス) id: 59223def46 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - 空さん» 空様、コメントありがとうございます。逆風、吹いてますが、見守ってやって下さいませ。これからも楽しんで頂けるよう、頑張ります(*^^*) (2014年1月9日 22時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:馨子 | 作成日時:2013年11月30日 1時