26．13 ページ26
《篤人が語れば》
色んな人からメールや電話が来た。
いや、まじで大丈夫だから。
みんな心配しすぎ！
ただ、Aさんからの電話だけは別だった。
まさか、かかってくるとは思ってなかった、ってのもあるけど、素直に嬉しかった。
心配されるのも、気にかけられるのも嫌な俺だけど、好きな人からなら心配されるのも悪くないのか。
思わず、自分の事、心配か、なんて聞いちゃったし。
麻也からも心配するうざいメールが来てたけど、前から約束していたイギリス訪問は、医者が大丈夫だと言うので、予定通り決行だ。
デュッセルとサウサンプトン間は直行便があるんだけど、本数が少なくて今回は無理だった。
だからヒースローまで麻也に迎えに来させる。
「篤人がひとりで飛行機乗って、ロンドンまで来るなんてっ！」
馬鹿にした発言をしつつも、デカイ顔が嬉しそうに笑ってる。
「脳震盪は？ 本当に大丈夫？」
「平気だって！」
「いや、まじで心配したからね」
「はいはい。宮市は？ てか、疲れた、腹も空いた」
「ミヤチは午後から合流」
「じゃまず昼飯食わせろ」
「…とりあえず空港から出ようよ」
麻也の運転で空港の駐車場を出る。
「なに？」
さっきから、何か言いたそうな顔で俺を見てる。
「この前、待ってたメールは来たの？」
「…何の事だよ」
「女の子？」
「子じゃねえし。つか、お前には教えない」
「えー、俺たち何でも話してきたじゃんかー」
あーもー。
「ミヤチが来る前にっていう僕の優しさに気付かないとは！」
「別にお前が考えてるようなんじゃねえし」
「うんうん」
「あー、あれだ、片思いってやつ？」
「…！ マジで？」
「まじ。しかも多分このまま終わるから」
「え？ なんなの、それ」
なんなのって言われても、だし。
まさか麻也と俺の恋バナすることになるなんて、ほんと不本意！
「もっと詳しく聞かせるべし」
わざと盛大にため息をついて、Aさんの事を話す。
麻也は黙って聴いていた。
こいつは、本当は真面目な奴だから、こういう時に茶化したりはしない。
俺は話しながら、あの、荷物を抱えて歩くAさんの姿を思い出していた。やっぱりあの人の事が好きだと思った。
「篤人なら、大丈夫だと思うけどなぁ。篤人なら大丈夫っしょ」
麻也は、対外的には俺をウッチーと呼ぶけれど、ふたりの時は篤人と呼んだ。
篤人なら、大丈夫っしょって、前にも言われたなと思い出す。
試合に出れなくなってた頃だ。
こいつはこれしか言わない。(笑)
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馨子(プロフ) - リオさん» リオ様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。仰る通り、篤人さんは何だか悲恋の匂いがしてしまうのです。時折見せる、物憂げな表情のせいかしらと思います。これからも、楽しんで頂けるよう、更新頑張りますね！f(^^;) (2014年1月15日 7時) (
レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
リオ(プロフ) - 初めまして。素敵なお話をありがとうございます、気付けば一気に読んでしまっていました。難しい恋、切ない恋、大人な恋……どうして彼はこんなにも似合うのでしょうね！まだまだ前途は多難な様ですが、これからも楽しみにしております(*^^*) (2014年1月15日 3時) (レス) id: 28f69f1789 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - 星さん» 星様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。ﾋﾟｰｺｰﾄのくだりは私も書きながら少し切なくなりました(笑)。自画自賛ですね…。読んで下さる方の妄想をいかに引き出すか、余り細かく描写しても良くないですし…。続きも楽しんで頂けるよう、頑張りますね。 (2014年1月12日 7時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
星(プロフ) - 初めまして。もしかしたらこんな切ない想いをこんな恋をしているのかも…と妄想しつつ（笑)一気に読んでしまいました。内田くんがヒロインの赤いピーコートの後ろ姿を見て、切なくなる想いにきゅうとなりました…。素敵な大人のお話ですね。続き楽しみにしています。 (2014年1月12日 2時) (レス) id: 59223def46 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - 空さん» 空様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。逆風、吹いてますが、見守ってやって下さいませ。これからも楽しんで頂けるよう、頑張ります(*^^*) (2014年1月9日 22時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：馨子
| 作成日時：2013年11月30日 1時
