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《Aが語る》
その夜は、篤人君ひとりで来ていた。
彼はあれから何度かこうしてやって来ては、晩ごはんを食べて行く。
時々大きいユリアンを連れて来たが、今日はひとりだった。
彼は、最初の時こそ手ぶらだったが、次からは必ず何かしら手土産を持って来た。
それは、デザートだったり、シャルケのグッズだったり。
「ご馳走になってばっかじゃ悪いんで」
と言う。
こういうところを見ると、ご両親がきちんとしてるんだろうなと思う。
ユリアンもこんな風になるといいなと思う。
その小さいユリアンが本当に小さかった時の可愛さがもの凄かったという話題になり、姉と私が力説するものだから、本人は恥ずかしくなったのか、早々に自室に引っ込んでしまった。
「ねぇヤコさん、写真見せてよ」
「見ちゃう？ あたしのエンジェル」
篤人君のリクエストで、姉がユリアンのアルバムを出して来た。
まだ洗い物が残っていたけど、もういいからと姉に促されて、私はコーヒーを入れてリビングへ行った。
篤人君の前にコーヒーを置き、隣に腰を下ろすと、彼の膝の上のアルバムを一緒に眺めた。
「ほんと、可愛いね。天使だわ」
「でしょ？」
「小さい時の方が日本人ぽくない？ ヤコさんに似てるってか、ヤコさん、若くて可愛い！」
「若くて、は余計！」
姉がキッチンから叫ぶ。
篤人君が笑いながら、ユリアンが何かを背負って泣いている写真の、ドイツ語のコメントを指差す。
「これ、なんて書いてあんの？」
「1歳の誕生日、一升餅を背負う」
「イッショウモチ？ 日本語？」
いつの間にかソファーの後ろに立っていた姉が説明してくれた。
「一升と一生をかけて、一生食べるのに困らないようにって、1歳の誕生日に子供にお餅を背負わせるのよ。そういう風習があるの」
「泣いてんじゃん(笑)」
「泣いてても可愛い」
他にも、篤人君が解らないドイツ語のコメントの意味を教えてあげながら、親バカと叔母バカはどの写真を見ても、可愛いねーとご満悦だ。
「ヤコさんはこっちに住んでるから解るけど、Aさんはなんでそんなにドイツ語解んの？こっちに住んでたとか？」
「ううん、勉強したから」
「A、それじゃ答えになってないわよ。篤人君が聞いてるのはそういう事じゃないでしょう」
「えーと、きっかけとかって事？」
「うん」
「きっかけって言ったらコロンボじゃない？」
姉が懐かしそうに言った。
「コロンボ？」
「そう、刑事コロンボ」
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馨子(プロフ) - リオさん» リオ様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。仰る通り、篤人さんは何だか悲恋の匂いがしてしまうのです。時折見せる、物憂げな表情のせいかしらと思います。これからも、楽しんで頂けるよう、更新頑張りますね！f(^^;) (2014年1月15日 7時) (
レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
リオ(プロフ) - 初めまして。素敵なお話をありがとうございます、気付けば一気に読んでしまっていました。難しい恋、切ない恋、大人な恋……どうして彼はこんなにも似合うのでしょうね！まだまだ前途は多難な様ですが、これからも楽しみにしております(*^^*) (2014年1月15日 3時) (レス) id: 28f69f1789 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - 星さん» 星様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。ﾋﾟｰｺｰﾄのくだりは私も書きながら少し切なくなりました(笑)。自画自賛ですね…。読んで下さる方の妄想をいかに引き出すか、余り細かく描写しても良くないですし…。続きも楽しんで頂けるよう、頑張りますね。 (2014年1月12日 7時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
星(プロフ) - 初めまして。もしかしたらこんな切ない想いをこんな恋をしているのかも…と妄想しつつ（笑)一気に読んでしまいました。内田くんがヒロインの赤いピーコートの後ろ姿を見て、切なくなる想いにきゅうとなりました…。素敵な大人のお話ですね。続き楽しみにしています。 (2014年1月12日 2時) (レス) id: 59223def46 (このIDを非表示/違反報告)
馨子(プロフ) - 空さん» 空様、ｺﾒﾝﾄありがとうございます。逆風、吹いてますが、見守ってやって下さいませ。これからも楽しんで頂けるよう、頑張ります(*^^*) (2014年1月9日 22時) (レス) id: b44ca2bc26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：馨子
| 作成日時：2013年11月30日 1時
