怪盗サーカスのお仕事日記 (ページ9)

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ab side

「…ねぇ、もし僕が誰にも言わなければ、これからも一緒にいられる？」
『亮平…？』
「ねぇ、そうしようよ。僕、絶対秘密を守るから。師匠を守るから」
『だが、』
「お願い！師匠が捕まったらふっかだって可哀想だし、…それに、怪盗Snowが捕まったら、きっとみんな悲しむよ。怪盗Snowはみんなの夢なんだよ。希望なんだよ」

結局、俺の小さな願いに絆されたのか、ふっかのことを想ってなのか、師匠が捕まることはなかった。
その代わりに、もう二度と怪盗Snowが現れることもなかった。

師匠がサーカス団を作ったのは、そのすぐ後のことだった。
随分大胆なことをするもんだと思ったけれど、怪盗なんてやっていた人に対してそんな事を言うのも変かと一人で思い直して笑ったりした。

そして、サーカス団をきっかけに、今まで父親のこまごまとしたマジックにはあまり興味がなさそうだったふっかも、彼と一緒になってサーカスにのめり込むようになった。
俺も俺で、師匠を守るという言葉通り、彼のそばを離れることはなく、今まで以上にマジックの腕を磨いた。

ふっかは知らなかったと思うけれど、俺がサーカスに入り浸っていたのは、単純にマジックが好きだからという以外にこんな理由もあったんだ。

でも、今日あの少年が現れて思ったんだ。
師匠もついにこの世を去って、守るべきものだったサーカスもなくなってしまうのなら、そろそろふっかには本当のことを教えてあげてもいいのかもしれないなって。
だから俺は、20年越しに種明かしをすることに決めたんだ。