怪盗サーカスのお仕事日記 (ページ11)

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だとしたら、そんな立場にいる彼が怪盗に会いに来たなんて、知られたら結構まずいことになるんじゃないのか。

俺が続けてその疑問を口にすると、彼は少し悲しげに笑ってこう言った。

ru「まずいどころじゃ済まないでしょうねぇ。リークでもされたら、即刻会社から追い出されることは必至です。ただでさえ、僕は一族から疎まれていますから」

権力者の世界などよく分からないが、その諦観したような笑みを見る限り、お金があるからと言って彼が今幸せに暮らしているのかと問われると、どうもそうではないように感じた。

ab「じゃあ何で…何のために師匠に会いにきたんですか？」
ru「…ひとつ、盗んで欲しいものがあったんです。でもその師匠とやらがいないなら、どうせ僕の目的は果たせないんだ。だったらこれ以上は聞かない方が身のためですよ。僕がここに来たことだけバラさないでもらえれば、それで構いません」

そう言ってくるりと背を向けたラウールくんの姿はまるで昔の俺のようで、ちょっぴり胸が苦しくなった。

fk「待って！…どうして父に依頼をしようと？」
ru「うーん、どうしてですかね…」
fk「それ、父なら受けていたと思いますか？」
ru「え？」

fk「貴方が余りにも悲しそうに笑うから…
俺ももうぼんやりとしか覚えてないですけど、父の、怪盗Snowの盗みには、いつも彼なりの正義があったらしいじゃないですか。
サーカスが出来てからもそう。父はいつも、弱いものの、そして子供たちの味方でした。
貴方の依頼にも何か事情があるのだとしたら、俺は父の代わりに貴方の助けになりたい。例え怪盗って形じゃなくても、何か…」

何となく、ふっかがそう言い出すような気はしていた。
師匠が俺を拾ってくれた時、彼は、俺が笑顔の裏に抱えていたモヤモヤとした気持ちを見抜いて助けてくれた。
師匠の性格をそのまま受け継いだようなふっかなら、虚勢を張ってるのがバレバレの昔の俺みたいな彼を放っておくことは出来ないだろうと思ったのだ。