白線の内側までお下がりください。 (ページ26)

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『ちょ、ちょっと！…大毅？！』

勢いよく
私が引き寄せられた先は
大毅の腕の中。

「……何で、アイツがおんねん」

『何で…って……今朝、ホームで電車待ってたら、淳太くんたちが声かけてくれて…それで』

今日の出来事を話すと
私を包む大毅の手には
次第に力がこもる。

「ほんまズルいわ…」

『……大毅？』

熱を持った大毅の体は
少し汗ばんでいて
私の首元に埋めた顔は
ハァハァ、と
なんだか息苦しそう。

『……とりあえず、横になりな？ね？』

弱っていく大毅の腕をゆっくり離し
そのまま
そっと大毅を寝かせた。

「……A、お願いやからさ…」

『ん？』

「…どこにも、行かんとって…や……」

珍しく弱気な大毅は
瞳を潤わせて
男らしくない力で
私の制服を引っ張った。

……ねぇ、大毅。

さっきから変だよ？

淳太くんたちと会ってから
大毅が大毅じゃないみたいで、

……なんだか、大毅が怖い。

弱くて
今にも壊れてしまいそうなぐらい脆くて

『ねぇ？……大毅。私に隠してることがあるなら、ちゃんと言って？だって、私たち…親友だよね？』

すると、大毅は
弱々しく私の手を握り

「……ごめん。今は話されへん。せやから…今日は帰って」

そう言って
握った私の手を離し
布団を被った大毅は
私に背を向けた。

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