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目の前で柔らかく微笑む懐かしい高校の後輩。
……らしい。
「わ、私の知ってるテオくんじゃない…」
「ふは、俺だってもう高3ですよ?そりゃ変わります。」
「かっこよくなったね…!」
「ほんとですか?!嬉しい…俺、Aヌナにそう言われたくて頑張りました…!!」
「あ、う、うん、ありがとう…?」
結構な爆弾発言になんて言えばいいのか戸惑う。
なんか私の周りタラシばっかだなぁ…
「ふふ、先輩意味分かってますか?」
なんて、頬を染めて可愛く笑うテオくん。
…分かってますよ、ちゃんと。
きっとテオくんも私のこと鈍感だと思ってるんだろうけど、
そんな反応されちゃ困ってしまう。
「A先輩は変わってないですね。」
「う、うーん?嬉しくないな。」
「ふはっ、褒めてるんですよ?僕が大好きな先輩のままです。」
ストレートに言われて、顔を赤くしてしまう私に、
嬉しそうに笑う。
…なんだか、ジミン先輩に似てるな。
笑顔が甘くて、
ふわふわしてて、
優しくて。
そう思うと、どんどん先輩に見えてきて。
そこで気がついた。
ハッとして、後ろを振り向く。
「…先輩?どうしたんですか?」
「あ……ううん、なんでもないよ。」
陽の当たるあの席は、引いたまんまの空の椅子だけだった。
「……??そういえばあそこの席、いつも同じ人が占領してるんですよ。」
「…え?」
「お気に入りなのかな。常連なんですけど、いつも外を眺めながらコーヒーだけ飲んで帰るんです。あ、たまにケーキ食べるな。」
「ショコラケーキ…」
「そうそう!!え、ヌナなんで分かったの?!」
「え?!ああいや、お、美味しいじゃん?コーヒーと合うし…。」
ジミン先輩が、いつも来てる。
いやいや、違うよ。
ジミン先輩ももともとここのカフェ好きだったんだから。
だめだ、A。
勘違いしちゃだめ。
泣いちゃ、だめ。
「Aヌナ…もしかしてさ、好きなの?」
「え?」
「あの席の、常連さん。多分、大学生だよね?」
「…。」
好きなの?
分かんない。好きじゃないって、思いたい。
好きじゃないよ、って言いたい。
でも、言えない。
「ヌナ、もう少しここに居れる?」
「大丈夫だけど…」
「じゃあ待ってて、僕もうバイト終わりだから。」
「分かった。」
待つ間、私が好きだった席に座る。
さっき先輩が座ってた席。
ちょうど日が落ちて、もっと日が当たる席。
暖かいのに、悲しい。
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作者名:たぁー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/TAA00/
作成日時:2023年2月15日 0時