すれ違い ページ18
少し冷たくなった風が運んできた、金木犀の香り。
あんなに暑かった夏が終わり、代わりに街の色が鮮やかになった。
ジミン先輩に会いたい一心でほぼ毎日通っていた行きつけのカフェも我慢して、
連絡はもちろんあっちからも来ない。
あんなに先輩一色だった世界は、驚くほど跡形も無くなった。
避けるわけでも無く、先輩が来るかもと怯えていたのもほんの一瞬で、むしろ普通に生活していても先輩を見もしない。
ああ、これが先輩との距離なんだな。
もうここの所、先輩は幻だったんじゃないか、夢だったんじゃないかと真面目に考えてしまうほどあの出来事が嘘のようで。
3人で海に行った日。
2人揃って"気づけ"なんて言っていたけど、
それがどうゆう意味かなんて1ミリとも分かっていない。
それでも2人はあの日のことを掘り返すことは無かった。
きっと"答え合わせも自分でしろ"ということだろう。
変わるなんて言いながら、海の日からずっとジミン先輩が頭の中をグルグルと駆け回っている。
あんなに好きだった甘い微笑みが、記憶から消えてゆく。
ずっと先輩を想ってるのに、考えてるのに。
嘘みたいに、知らなかったみたいに、
日が経つたびに先輩の顔が霞む。
それが虚しくて。ただ、悔しくて。
先輩が魅力的な意味が分かった気がした。
会えないのに、諦めようとしてるのに、
会えば会わないほど、先輩への想いは膨らむばかりなんだ。
ズルい。
こんなに遠いのに、先輩はいつだって私を苦しめる。
大好きな金木犀の香り。
大好きな紅葉。
ちょうどいい気温に、よく澄んだ空気。
いちばん好きな季節。
一年中、まだかまだかと楽しみにしてたのに。
今年は全部が私を悲しくさせる材料でしかない。
こうやって外を歩くだけで干渉に浸るなんて、
老いたかな、私。
なんて考えながら向かってる先は行きつけだったカフェ。
先輩が居るかもと恐れて行かなった大好きなカフェ。
行きたい行きたいと嘆いていた私に、ユナが気を利かせてテヒョン先輩に相談したところ、どうやらジミン先輩とはもうずっと一緒らしく、カフェには行っていないそう。
先輩との思い出が詰まっているカフェ。
距離がぐっと縮まったのもここだ。いや、私が勘違いしていただけだったけど。
ただ自分で首を締めることは分かってる。
それでも、変わると決めたんだ。
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作者名:たぁー | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/TAA00/
作成日時:2023年2月15日 0時