1. 〜水浴び〜 ページ7
朝目覚めると、彼女の腹の痛みは綺麗さっぱり消えていた。クロはそれに安心したと同時に問題ができたことを悟った。
ーー彼女に外の環境に慣れてもらわないといけない。
産まれてから16年間、安全で害のない屋敷の中で生きてきた彼女が、いきなり家出をしてそこらの川の水を飲み、魚を食べることは体に合っていないようだった。だが、これから先も続く旅でいちいち安全な食べ物を買うお金もほとんどない。
クロは心を痛めながらも、彼女が外の環境に慣れることを待つことにした。
ーーーーー
「ひゃっ…」
家出をしてから数週間後、やっと外の食べ物にもあたらなくなってきた。
今はクロに頼んで、森の中の川で水浴びをしている。川であるため、もちろん冷たい水。
「川で水浴びなんて、初めて…」
彼女は少し苦笑いを浮かべながらも、足をゆっくりと水面につけた。
陸からゆっくりと足をつけ、トプンと水の中に入る。一瞬の身震いの後、胸下までの水深の川の中央まで行き、そこで体を洗い流した。
「クロー!とっても気持ちいいよ。クロも後で入ってねー!」
「おー…」
近くの岩陰から軽く手を見せるクロに笑顔を向け、髪に手ぐしを入れながら丁寧に洗う。
その頃岩陰に座っていたクロは、振り返りたい葛藤と静かに戦っていた。
髪を洗い流す彼女は天界から降りてきて水浴びをする天女のように美しく、その繊細で純粋無垢の肌は日の光に照らされ雫と一緒にキラキラと輝いている。
彼女は長い黒髪を洗い終わると、無造作に広げて少し泳いだ。泳ぎは得意ではなかったが、清らかな水に触れていると泳ぎたい衝動に駆られた。
「気持ちいい…ん?」
ふと右手に違和感を感じた。それを掴んで水面から上げてみると、赤黒いザリガニが握られていた。
「キャア!!」
彼女は驚いてザリガニを離す。何も攻撃してこず、水中へ戻っていったザリガニに安心しながら顔を上げると、悲鳴を聞いて顔を覗かせたクロと目があった。
「あっ……///」
「わ、悪りぃ…!///」
クロは再び岩陰に隠れ、その染まった頰を見られないように隠した。
一瞬見えた美しい裸体に、胸の高鳴りと男としての欲求が抑えられなくなる。
「オ、オレ……その辺で何か探してくっから、気が済んだら早めに上がれよ…///」
「う、うん…///」
クロはそう嘘をついて彼女から離れた。
〜〜〜〜〜
長い間更新できずすみません…!
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作者名:星歌 | 作成日時:2018年5月5日 21時