クロと彼女～ifの物語～ (ページ22)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:5,910 hit

1. ～暗闇～ページ22

「うっ……」

クロが目を覚ましたのは、流れが緩やかになった川岸だった。頭部がズキリと痛み、そこを手で撫でると血がどっペリと付いていたが、傷口は既に塞がっていた。

「Aっ…！？」

クロは起き上がって周りを見渡す。周りにはちらほらと溺死した犬たちが転がっていたが、彼女の姿はどこにもなかった。
慌てて立ち上がり、川岸を走る。打ち付けた全身がズキズキと痛むが、彼女のこと以外何も考えられなかった。

走って、走って、走って………どれだけ走ったのか分からない。既に日は沈み、辺りは暗闇に包まれていた。

クロの足は突然崩れ落ちるように止まり、そのまま地面に倒れた。もう足が限界だった。疲労と同時に深い絶望感が彼を襲う。

「うっ……あっ………！」

月の光が涙で滲む。
彼は小さく嗚咽を漏らしながら泣いた。
彼女を失い、彼の世界は一気に暗闇へと戻される。彼はまた一人になった。
彼はそのまま夜が明けるまで泣いたが、その涙が枯れることはなかった。

ーーーーー

吸血鬼は微かな希望を信じて、彼女を探し続けた。
希望といえば聞こえはいいが、吸血鬼は彼女が死んだことを受け入れられないのだ。

もしかするとどこかで生きていて、自分が迎えに来てくれるのを待っているのかもしれない。吸血鬼はそう信じて川岸の周辺を彷徨った。