クロと彼女～ifの物語～ (ページ14)

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1. ～村人～ページ14

2人は洞窟を出る。クロが彼女を抱え、猛スピードで森を駆け抜けると村が見えてきた。農作業をするお年寄りや、世間話をする女たち、元気に走り回る子供。貧相だが、活気ある村だ。

「ここなら村医者いそうだな…」

クロはそう呟きながら、彼女を抱えて村に入る。すると早速それに気づいた子どもたちが駆け寄ってきた。

「にいちゃんどうしたんだ？」

「かわいいねーちゃんも一緒だぞ！」

「誰か探してるんー？」

「おー…この村に医者はいねーか？」

そばかすのある幼女に答えると、子どもたちがクロの手を引き案内してくれた。

「おねーちゃんどっか悪いんー？」

「昨日熱が出てな…」

「大変だー！」

「ねーちゃん大丈夫？」

「大丈夫だよ、ありがとね」

心配してきた茶髪の子どもに彼女は優しく答える。
優しい子どもたちに案内され、やってきたのは教会の前だった。

「せんせー！びょーにん運んできたよー！」

そばかすの幼女が教会の前で神父と立ち話をしている医師に声をかける。医師はクロに抱えられた彼女を見ると、慌てて駆け寄ってきた。

「旅の方かな？風邪ひきました？」

「2人で旅してて、昨日熱出してな…。診てもらえるか？」

「もちろんだよ。さ、診療所へ行こうか」

親切な医師に安堵して、大丈夫だぞと彼女に声をかける。彼女もそれにうなづき、自分の足で診療所まで向かおうとした。だがその時、震える神父の声に足を止めた。

「き、吸血鬼…」

「はっ…？」

「こ、この男…吸血鬼だぁー！！！」

神父の悲鳴に似たような大声に村人たちが集まってきた。

「吸血鬼？」

「あの血を吸うバケモノのこと？」

「え！？バケモノ！？」

「ほんとだ！あいつの目、真っ赤だ！」

「間違いない、あいつは吸血鬼だぞ！」

村人たちに取り囲まれ、彼女を守るように背中に隠す。先程まで親切だった医師に害虫を見るような目で見つめられ、優しかった子どもたちには恐怖の目で見られている。
クロにとって、よく見たことのある光景だった。