第2話 ページ17
Aは最後の1匹まで結界の中に入った事を、呪力を通じて感じ取った。
感じ取ったAは、柱から壁へと、手が離れない様に、呪力の流れを途切れさせない様に手をスライドさせながら、そのまま階段を上がって行く。
行く先は4階。
そこには相変わらず結界があった。そして相変わらず、その中に仮想怨霊ヨジババが閉じ込められている。
しかし、先程と異なるのは、何百匹という虫、爬虫類、動物も入っている事である。それらの動物達が一体何匹いるかは、集めた本人であるAもわからない。
真希が腕を組んで自分の方を見ているその視線を感じながら、Aは先程よりも強く呪力を流す。
「蠱毒操術・転」
その瞬間、ビリリと空気が震えた。
百足、蜘蛛、鼠。Aが捕まえた動物達の殺気が大きく、いっそ不自然な程に膨れ上がり、結界の外にまで伝わったのだ。
ヨジババもそれを感じたのか、ジリ、と後退りをする。
百足が鎌首をもたげる。蜘蛛が足を上げる。鼠が毛を逆立てる。
彼等は威嚇をしていた。
では、彼等は一体誰に向けて威嚇をしているのだろうか。
ヨジババだった。
彼等の視線の先にいるのは、殺気を向けられているのはヨジババだった。
女――――Aと真希の目の前に広がるは、まさしく地獄絵図。
Aがはった結界の中で、動物達が異なる同士だけでなく同じ種同士で、喰い合っている。
真希はその光景に思わず目を背けた。
Aがコントロールをして、彼等が今までに感じた事のないような殺意を持たせたのだろうか。喰い合いは本来終わるよりも、ずっと早く終わった。
当たり前だが、お互いを喰い合うのだから、最後の最後には一匹残る。
そしてその一匹には、今まで喰い合ってきた他のもの達の力――――呪力を全て受け継いでいると言われる。
喰い荒らされた沢山の骸の中に、でろりと揺れた影が1つ。
影は、この地獄を制したもの、又、これからAに有無を許されずに使役される運命を持ったものであった。
影がゆっくりとこちらを向く。
自分のものか、返りついたものか。その影には赤い液体がこびりついている。一部の赤は、黒くなっている。
目は落ち窪み、髪の毛は相変わらずバサバサと顔にかかっていた。
ヨジババだった。
喰い合いで生き残ったのは、ヨジババだった。
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しゆ - 続編が出ました。更新速度は遅いですが、よろしくお願いいたします。 (2021年3月18日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - 山田憂さん» コメント、そして温かいお言葉……ありがとうございます! これから寒くなる季節、山田憂さんも体調には気を付けてください! (2020年11月3日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
山田憂 - 夢主とキャラクターの細やかな心情が刺さりました…。体調に気をつけてお過ごし下さい。応援してます! (2020年11月2日 13時) (レス) id: 2e6603876c (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - チベットスナギツネさん» 神作!? ありがとうございます! 嬉しいです!! コメントもありがとうございました! (2020年10月30日 21時) (レス) id: 311275af3f (このIDを非表示/違反報告)
チベットスナギツネ - 神作・・・言いたいことは、それだけです。( ´∀`)bグッ! (2020年10月29日 23時) (レス) id: 4fb9137dc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゆ | 作成日時:2020年10月28日 22時