第2話 ページ16
ザワザワという音が近づいてきたのを、真希は感じ取った。それは柱に触れ続けているAも同じであろう。
しかし、少し顔をしかめた真希とは打って変わり、Aの顔にはなんの表情も浮かんでいなかった。あるとするならば無、である。
Aは柱へ、柱を通じて地面へ、自分の呪力を流し続けていた。呪力が柱を感じ、地面を感じ、そしてある特定の物達を感知する。
真希は別段、集団恐怖症ではないし、これから来る彼等が苦手というわけでもなかった。
しかし、と真希は思う。
苦手ではない、が、だがしかし。地獄絵図にはなる。確実に。
その刹那だった。
なにか黒い影が開け放たれた窓から滑り込むようにして、3階のフロアに入り込んで来た。
それを目視した瞬間、真希の首筋にゾワリと鳥肌が立つ。
入り込んだ影はAと真希を避け、階段を上がり4階へと――――仮装怨霊ヨジハバの元へと向かう。
ザザザザと、何百という細かい足が床を打ち鳴らした。
ヨジババの―――――Aがはった結界の前に来た影は、結界内に一歩でも入り込めば消滅してしまう、その事を理解しているのか、本能で感じたのか、それは定かではないがそこで止まった。
しかし。
3階のフロアで、今も尚柱に手をついたままのAは唱え、呪力を流す方向を変えた。
「――――蠱毒操術・承」
ここで余談なのだが、動物には「生体防御行動」と言われる本能がある。
これは痛みを回避するために自分が死なないようにする物であり、生物である影達も持っている物であった。
不思議なことが起こった。
生体的防御行動があるはずの影が、一斉に結界を通りヨジババのいる領域へと動いたのである。結界に入ってはならない――――結界を通ってはならない、という本能に抗って。
その結果、結界を通ったことにより影の一部が消滅した。否、死去したと言った方が良いか。
ボタボタと、焼け爛れた影の一部だった物――――百足、鼠、蚤、蜚蠊、蜘蛛など100種の人に害をなす生物達が、落ちていく。
ヨジババは結界を破って入って来た虫、動物とその下に広がる影だったもの達の骸を見る。影達も目の前目の前に立つ。
お互いに、なんだこいつ。と思ったからか、沈黙が落ちた。
女の目の前に広がるは、正しく地獄絵図。
Aがはった結界の中で、動物達が異なる同士だけでなく同じ種同士で、喰い合っている。
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しゆ - 続編が出ました。更新速度は遅いですが、よろしくお願いいたします。 (2021年3月18日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - 山田憂さん» コメント、そして温かいお言葉……ありがとうございます! これから寒くなる季節、山田憂さんも体調には気を付けてください! (2020年11月3日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
山田憂 - 夢主とキャラクターの細やかな心情が刺さりました…。体調に気をつけてお過ごし下さい。応援してます! (2020年11月2日 13時) (レス) id: 2e6603876c (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - チベットスナギツネさん» 神作!? ありがとうございます! 嬉しいです!! コメントもありがとうございました! (2020年10月30日 21時) (レス) id: 311275af3f (このIDを非表示/違反報告)
チベットスナギツネ - 神作・・・言いたいことは、それだけです。( ´∀`)bグッ! (2020年10月29日 23時) (レス) id: 4fb9137dc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゆ | 作成日時:2020年10月28日 22時