第2話 ページ13
キンッ、キキンッ、と金属同士がぶつかり合う音が4階の校舎に響く。
音だけを見れば、Aと仮装怨霊――――ヨジババが互角に戦っている風だが、実際はAは防戦一方。ヨジババが振り回す鎌を防ぐのに精一杯だった。
同学年の真希が、4級だが、その実3級程度の呪霊を祓えるのに対し、Aは4級それ相応の力しか持ち合わせていなかった。
去年、もう少し――――否、もっとちゃんと呪術師として生活をしていれば。Aは短刀で攻撃を受けながら、唇を噛む。
去年、自分がちゃんと呪術師としてしていれば、こんなことにはならなかっただろう。が、しかし、それは今となっては後悔をしても意味のない事だった。
真希は乱暴に小学校の教室の戸を開けた。
教室の中には小学生用の机と椅子、教卓、黒板。先程から代わり映えのしない光景が広がっている。男の子が1人いる――――なんて光景を期待していたのだが、それも儚く散ってしまった。
真希はギリ、と拳を固く握る。
早く見つけなければ、今仮想怨霊の相手をしているAは、殺されてしまうだろう。
そんな嫌な考えが脳裏によぎり、頭を振る。
いや、大丈夫だ。Aは。そう言い聞かせるが考えは消えてはくれない。
「クソッ」
ダン、と硬く握った拳で戸を叩く。
あ、と声が漏れ出た。本当に、「思わず」と言った風に。
手から短刀が弾き飛ばされ、クルクルと円を描きながらAのずっと後ろに飛ばされる。ヨジババが、ついに、Aを丸腰にすることに成功した瞬間だった。
「あ、ああ、あかい、ああ、あお、お、き、きき、どど、れ、が、ががい、いるぅぅぅぅ!!」
歓喜しているのか、ヨジババは大声を出す。
Aは咄嗟に後退した。
ツゥ……、と汗が頬を伝う。まずい、と言う事は武器が手から離れた時から分かってはいたが。
こんなにも違うものなのか、とAはしみじみと感じてしまう。
武器があるのとないのでは、こんなにも持てる自信が違うのか。
「まずいなぁ」Aは呟く。
「何がまずいんだ」
「んー、そうねぇ、まず初めに武器が飛ばされたってとこかな。これが1番大きい。んで、次にあたしが弱い事……あ、やっぱこっちが一番かなぁ……って」
真希ィ! 歓喜をしたのかAは大声を出した。
429人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しゆ - 続編が出ました。更新速度は遅いですが、よろしくお願いいたします。 (2021年3月18日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - 山田憂さん» コメント、そして温かいお言葉……ありがとうございます! これから寒くなる季節、山田憂さんも体調には気を付けてください! (2020年11月3日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
山田憂 - 夢主とキャラクターの細やかな心情が刺さりました…。体調に気をつけてお過ごし下さい。応援してます! (2020年11月2日 13時) (レス) id: 2e6603876c (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - チベットスナギツネさん» 神作!? ありがとうございます! 嬉しいです!! コメントもありがとうございました! (2020年10月30日 21時) (レス) id: 311275af3f (このIDを非表示/違反報告)
チベットスナギツネ - 神作・・・言いたいことは、それだけです。( ´∀`)bグッ! (2020年10月29日 23時) (レス) id: 4fb9137dc8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しゆ | 作成日時:2020年10月28日 22時