第1話 ページ5
本日全ての授業が終了し、現在は放課後である。
「じゃ、行ってくる」
手鏡で髪型を少し直したAは、スマホ片手に立ち上がり、真希に宣言した。
「はいはい、いってら」相変わらず真希は興味なさげに手を軽く振る。
挨拶で失敗したのを挽回すべく、狗巻棘を遊びに誘おう、というわけである。
パンダが、そういう空気を察知したのか、またもやニヤニヤと笑い始める。
それを横目に、Aは棘にスマホの画面を見せた。
「ツナマヨ?」
なに? と首をかしげる棘に、スマホの画面を見せている女子生徒は少し深呼吸をしてから、言った。
「これ、行かない、です、か?」
ダメだ、と思う。
はやり深呼吸をしても緊張するものは緊張する。その証拠に声が出にくくなってしまった。
なにが幸せホルモンだ。
「なぁにが“幸せホルモン”だよ」
浅草の某フードコートである。そこに、眼鏡でポニーテールの女子生徒――――
「あいつの事好きなら、スケジュールくらい確認しておけよ」
ズゴゴゴ、と少しになったコーラを飲む真希か言った。
あいつ、とは狗巻棘のことである。
だってぇ……、と情けない声を出すAを慰めるかのように、パンダはポフポフとかたを叩く。
「しょうがねぇよ、真希。こればっかりは」
「そうだよ、しょうがないよ。だってスケジュール完璧主義に把握してたらさ、ストーカーっぽいじゃん? ワンチャン通報され……なくなくなくもない」
そしたら家庭裁判所に連れて行かれて、うちの親だから、少年院、もしくは児童自立支援施設か児童養護施だよー! と嘆く真似をするA。
彼女は先程、遊びに誘うのを失敗したのである。失敗した原因は、彼――――狗巻棘のスケジュールの不把握。
『これ、行かない、です、か?』
Aは、浅草の某おにぎり専門店のサイトが表示されているスマホを見せながら言った。
棘が顔をスマホの画面に近づける。
Aはそれに思わずビクッ、と肩を震わせてしまった。
『明太子?』
『え?』
何と言ったのだろうか。棘はスマホの画面を指さしたまま、聞いてくる。それに助け船を出したのはパンダだった。
『今日行くのか? だと』
Aはあっと声を漏らし、コクコクと頭を振った。
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しゆ - 続編が出ました。更新速度は遅いですが、よろしくお願いいたします。 (2021年3月18日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - 山田憂さん» コメント、そして温かいお言葉……ありがとうございます! これから寒くなる季節、山田憂さんも体調には気を付けてください! (2020年11月3日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
山田憂 - 夢主とキャラクターの細やかな心情が刺さりました…。体調に気をつけてお過ごし下さい。応援してます! (2020年11月2日 13時) (レス) id: 2e6603876c (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - チベットスナギツネさん» 神作!? ありがとうございます! 嬉しいです!! コメントもありがとうございました! (2020年10月30日 21時) (レス) id: 311275af3f (このIDを非表示/違反報告)
チベットスナギツネ - 神作・・・言いたいことは、それだけです。( ´∀`)bグッ! (2020年10月29日 23時) (レス) id: 4fb9137dc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゆ | 作成日時:2020年10月28日 22時