第3話 ページ33
「あったあった!!」
ズリズリ、と四つん這いのまま後ろに下がって、ビニール袋に入った塊りを引っ張り出す。加えていたライトを切り、真希の所までもっていく。
真希のいるちゃぶ台まで運びビニール袋を開ければ、そこには少し埃っぽいかもしれないが、確かにタコ焼き機がそこにあった。
わーい、と小さく拍手をしていればコンコンと戸が音を立てた。誰かが来たのだ。
先生? と思いAは立ち上がる。
「洗っといてやるよ」
「お、気ぃきくじゃん」
ありがと、と言って戸に近づく。呪術高専に入るのは、学校関係者と一部の業者のみなので特に怪しい人ではないだろう、と特に怪しまずに戸を開けた。
そして閉めた。
真希、とAの口から低い声が出る。名前を呼ばれた本人は台所でタコ焼き機を水につけながらニヤニヤと笑っている。
真希、このやろう。
そう言う目線を彼女に向けAは足早に姿見の反対に置かれたタンスを開け、服を出し始める。
ワンピースを引っ張り出しながら考える。ワンピースに着替える? いや、でも一回この格好、Tシャツと短パン姿を見られたわけだし……。
仕方なしにAはパーカーを出して羽織る。そして今度は姿見に近づき、鞄からポーチを取り出してファンデーションを軽く肌に乗せ、リップクリームを唇に乗せた。
髪型は整えている時間がないので、黒いゴムで上の方でまとめた。
コンコンと戸を叩いた犯人、いきなり訪ねてきた犯人は呪術高専二年生の男子達だったのである。つまりは、パンダと狗巻棘の訳であって。意識している異性にスッピン、髪の毛ボサボサ、ヨレヨレTシャツ姿を見られたのであって。
「マジでないわ」
もう一度戸の前に立つその瞬間、真希にそう小声で毒づく。しかし本人はニヤニヤと尚も楽しそうにしているだけ。
「ごめんね、びっくりしちゃって」
にっこりと笑いながら戸を開け、男子陣――――パンダと狗巻を迎えいれる。
「いや、俺らも勝手にAの部屋に決めてすまねぇなぁ」
「こんぶ」
「大丈夫だよ」
笑みを絶やさない様にしながら、2人が通り過ぎるのを待つ。が、内心バクバクなのは当然であった。
なんせ狗巻を部屋に挙げたのは初めてなものなので。
Aは震える手で、狗巻から渡されたお詫びの唐揚げを大皿に乗せ始めた。
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しゆ - 続編が出ました。更新速度は遅いですが、よろしくお願いいたします。 (2021年3月18日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - 山田憂さん» コメント、そして温かいお言葉……ありがとうございます! これから寒くなる季節、山田憂さんも体調には気を付けてください! (2020年11月3日 16時) (レス) id: 0614066502 (このIDを非表示/違反報告)
山田憂 - 夢主とキャラクターの細やかな心情が刺さりました…。体調に気をつけてお過ごし下さい。応援してます! (2020年11月2日 13時) (レス) id: 2e6603876c (このIDを非表示/違反報告)
しゆ - チベットスナギツネさん» 神作!? ありがとうございます! 嬉しいです!! コメントもありがとうございました! (2020年10月30日 21時) (レス) id: 311275af3f (このIDを非表示/違反報告)
チベットスナギツネ - 神作・・・言いたいことは、それだけです。( ´∀`)bグッ! (2020年10月29日 23時) (レス) id: 4fb9137dc8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゆ | 作成日時:2020年10月28日 22時