episode2 ページ3
「それは、すみませんでした。」
軽く頭を下げて謝る。…………どうせ『最強になるべく育てられた人』だもの、周りから甘やかされてとことん、優しくされて来たに決まってる。
私は今も何もしていないし、今からも必要最低限なことしか話す気はない。
だけど別に悪くなくても謝っておくことに越したことはない。謝るか謝らないかじゃなくて、彼が不機嫌になったら謝らなければいけない。
ただ、それだけの事。
私の返答が気に食わないのだろう、「可愛くねぇ女」とボソリと呟いたのを私は聞き逃さなかった。
何が『可愛くねぇ女』だ、婚約者の私のことをいつも放ったらかしにしてるくせに。
幼なじみにご執心のくせに。
「あっ、それから俺と桃香今からデート、行ってくるから」
「悟ッ！！デート、なんて買い出しに行くだけでしょ？」
私の方を見て意地悪そうに見つめてくる彼。
………どうしてそんな瞳で私を見つけるのか分からない。
瀬戸内さんが「悟ッ！！」と叫んでいるけど彼の手はますます彼女の手を握ってばかり。
………もしかして、嫉妬するとでも思っているのか。
この婚約は政略的なものなのに？？？
お互いの利益が一致しただけの婚約関係なのに？？
言うならば家同士のビジネス関係と言っても過言でないのに？？
「別にいいんじゃないでしょうか。買い出しに行ってきても。」
「悟ッ、Aちゃん誤解しちゃうよっ！！私達なんともないのに…………！！」
いや別にいいんだって、誤解だろうとなんであろうと。
心の中でそうつぶやく。
というか本当にそうならその貴女から絡めている腕をどかせばいいのでは？？？
腕は絡めてその手の先は恋人繋ぎなんてもう確定じゃない。
「ッ……………………！！お前、本当に可愛くねぇよな、なんでお前なんかと婚約してんだか…………。」
「それを私に言われても、分かりかねますね。」
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