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剣「緊張してます?」
「そんなことないです。」
剣「身体強張ってるのに。」
トンッ、トンッ、と指で首筋や腕、脚を触った剣持さんは口角をあげながら「うそつき、」なんて耳元で囁いた。
耳にかかる息がくすぐったくて身を捩ってしまう。
いつもの剣持さんだったらこんなことしないからこそ暴走期に入ったらこんな風になるなんて想像もできなかった。
そもそも暴走期を"獣に近付く"="食欲が増す"くらいだと思ってたのにここまで変わるなんてもう二重人格のレベルだ。
私が別のことを考えているのに気付いたのか、剣持さんはつまらなそうな表情を浮かべた。
剣「他のこと考えてる暇があったら僕のこと考えたらどうなんですか。」
「他のことなんて……」
剣「考えてますよね?」
赤く鋭い瞳に見つめられるとこれ以上嘘なんて吐けそうになくて口を閉ざしてしまう。
頭が良いからか、剣持さんは自分がどんな発言をすれば私が思い通りに動くのか計算できるのかもしれない。
こんな感じにずっと剣持さんの思い通りに動いてしまうのは少しだけ悔しい。
悔しさから自然と剣持さんの腕を掴んで反抗してしまう。少しでも意表を突いてやろうっていう気持ちが出てきてそのまま剣持さんの顔に自分の顔を近付けた。
剣「ちょ、何ですか、急に。」
「別に。」
まさか私の方から顔を近付けるなんて思っていなかったのか、剣持さんは驚いた表情を浮かべて私から顔を離した。
顔は手で覆われてしまってよく見えないけど月明かりで赤くなった耳元が視界に入る。
やっと元の剣持さんを戻ったような、そんな錯覚に陥って今度は私の口角が上がる。と、剣持さんは私の表情を見て不満そうな顔になった。
剣「その勝ち誇った顔やめてくれません?」
「そんな顔してないですよ。」
剣「してますよ。まだAさんの方が不利な立場にいるの分かってなさそうな、そんな顔です。」
そうだった。ここで剣持さんの意表を突いたところで状況は何一つ変わってない。
まだ剣持さんが捕食者で私は非捕食者、私の立場は不利なままだ。
不安そうに眉をひそめて剣持さんを見ると、剣持さんは深い溜息を吐いた。
剣「もう帰っていいですよ。」
「え……」
剣「僕は無理やりとか好きじゃないんです。暴走期に入って気性は荒くなってるけど本質は変わりません。」
ドアを開けた剣持さんは立ち上がった私の手を引いて廊下まで行くとすぐにドアを閉じた。
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葵 - この作品マジで私が出会ってきた作品の中で一番好きです! (2月10日 22時) (レス) @page38 id: 69a42b17dc (このIDを非表示/違反報告)
黒柚木 - 一気読みしました!kidとrlnの登場がうれしすぎます…!次回も楽しみにしています! (2月7日 12時) (レス) @page33 id: 5e10f7df77 (このIDを非表示/違反報告)
ペン(プロフ) - はじめまして、いつも楽しく見てます!!まさかの幼馴染に発狂しましためっちゃ好きですありがとうございます。これからも楽しみにしてます! (1月27日 23時) (レス) id: 5e2227c856 (このIDを非表示/違反報告)
蛙猫(プロフ) - 逆ハーレムのお話の中でもとても面白い作品でした。 (11月5日 13時) (レス) @page30 id: 94cbed9533 (このIDを非表示/違反報告)
(^o^)/(プロフ) - 本当に本当に主様の作品が大好きです。この作品一生愛します (11月3日 18時) (レス) @page30 id: b873b0040b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もも | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/Momo_UxxU_
作成日時:2023年2月4日 19時