僕の中の奇跡。１ VIXX

032：彼女の部屋を出る朝。 ページ32

　HONGBIN「いつも朝ご飯作ってるの？」
　A「いつもは作ってもらってるから(笑)」
　簡単なものしか出来ないって聞いたのに、カフェに負けないぐらいで
　味もおいしい。
　
　A「そろそろ、公園に行かなきゃ(笑)」
　食べた食器を洗いおわって彼女が僕の顔を見た。
　HONGBIN「うん」
　A「寝不足？」
　HONGBIN「ううん、公園に行ったらデートが終わっちゃうなって(苦笑)」
　ちょっとウルウルしてきて天井を軽く見上げた。

　こういう時って女の子が泣くもんだって思ってた。
　男の僕の方が、グッと来るものがあって涙が出ない様にするのが必死。
　
　A「ケン、散歩に行くよ〜」
　散歩の時間だとわかったケンが玄関とリビングを行ったり来たり走ってる。
　HONGBIN「はい(笑)」
　ケンを抱っこして床に座って、首輪にロープをつけるのを手伝った。
　
　HONGBIN「明日からはちゃんと言うこと聞くんだよ、ケン」
　A「…」
　ケンの頭を撫でてた時、彼女が急に何も言わずに立ち上がった。
　
　HONGBIN「先に行くね」
　Aちゃんも僕と想いが一緒だったら、ここでバイバイって言うのはツライ
　ことだってわかったので明るく部屋を出て行こうと思った。

　玄関には僕の靴がきれいに並べられていた。
　ケンが僕の靴を咥えて怒られてたのが、ずっと昔のことのよう。
　
　立ったまま靴を履いてたら、後ろから彼女にギューっと抱きしめられた。
　HONGBIN「…甘えたさん(笑)」
　僕は照れ隠しのためにそう言って後ろから回ってる彼女の手を握った。
　A「楽しかったー」
　HONGBIN「うん、僕も楽しかった」
　A「また、会えるよね」
　HONGBIN「今度は宿舎、逃げ出さないで、抜け出してくる」
　A「プッ(笑)ハギョンさんが怒って迎えに来るよ(笑)」
　HONGBIN「でも絶対に会いに来るから」
　A「うん」
　僕は気配でケンが近くにいないことを確認してドアを開いた。
　
　HONGBIN「先に下で待ってる(泣)」
　僕のこんなに泣いてる顔を見せれなかった。
　これでも歯を食いしばりながら、精一杯普通を装って玄関を出た。
　
　エレベーターの密室で、こらえきれない感情が溢れ出てきた。
　１階の「１」のボタンを押すのに、指がふるえて押せない。
　HONGBIN「ウ…(泣)」
　だんだん呼吸が苦しくなって、しゃがみ込んで声を押し殺して泣いた。
　
　ガタガタガター
　まだ動いていないエレベーターのドアが開いた。

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