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40.天秤が揺れ始める ページ40
非日常は傍に。
・
「え、……留学、ですか？」
マイク先生が歓声を上げた職員室で、思わず瞬きを繰り返した。
私の人生で一度も縁がないものだと思っていたから。
「ああ。所謂スカウトってやつだ」
ある日の昼休み、相澤先生は私を呼び出していつも通りの口調で言った。
私に、なんと、海外のヒーローが務める学校からスカウトが来ているらしいのだ。
それだけで十分衝撃的なのだが、その勧誘に首を縦に振るなら、二年間、国境を越えて留学するらしい。
「二年間……」
「まあ、帰国は卒業間近だな。それで、帰ってきたお前には高校生活は残ってない」
「え？半年くらいあるんじゃ」
「海外でみっちり絞られたんだ。条件さえ整えば、そのままプロヒーロー行きだろ」
その先生の言葉に、頭の上にタライが落ちてきたみたいな衝撃を覚えた。
本当にヒーローを目指すなら、留学が一番の近道。
でも、もう二度とみんなとの高校生は送れない。
みんなが、私のいない高校生活を送って、雄英高校を卒業していく姿を思い浮かべた。
「……えっと、考えさせて下さい」
「そのつもりだ。両親ともきっちり話し合えよ」
「はい。ありがとうございました」
スカウト。
ヒーローを目指す私にとっては最高に嬉しい話なはずなのに。
なんだか妙に、職員室を出る足取りは重かった。
・
(ヒーローになるためにこの学校に来たのにな)
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作者名：- | 作成日時：2017年8月15日 6時
