9.数年ぶりの再会 ページ9
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何年ぶりだろう、こうして千冬と話すのは。ずっと金髪だった髪は黒に落ち着いて、スーツを着て。なんだか大人になったんだなって実感した。
『今ペットショップの経営してるんだってね、一虎くんに聞いた。』
「あぁ、まぁな。一虎くんと場地さんに手伝ってもらいながら働いてる。」
『そう。ちゃんと働いてて偉いよ………私とは、違う、』
自分で言ってハッとした。千冬の眉間にシワが寄っていたから。この間、一虎くんから電話で飲みの誘いを受けた時、恐らく一緒にいたのは圭介だけじゃない。千冬もその場にいたんだと思う。だって微かに声がしたし、一虎くんの考えてることくらいわかる。私と千冬を仲直りさせたかったんだろう。
「…………なんで、水商売なんかやってんだ」
『やっぱりそれも一虎くんに聞いたんだ？』
「はぐらかすな。」
『千冬には関係のないことだよ。』
「っ関係は………ないかも、しれねぇけど、」
『だから知る必要ない。あの頃とはもう違うの、私がいるのは汚い世界だから。まともに働いてる千冬とは違うんだよ。』
苦虫を噛み潰したような顔をする千冬に、これ以上掛けてあげる言葉は見つからなかった。
「A、」
『………私はさ、ただ誰かに愛されたかっただけなんだ。愛してくれるなら誰でもよかった。それがこんな形だった。それだけのこと。』
「……………」
『ごめん、私ちょっと一服してくるね。』
千冬を責めているわけではない。あの時、悪かったのは私なのだろうから。そう思い、立ち上がってベランダに出ると、風が涼しかった。タバコを一本口にして、火をつけようとすれば、後ろから強く抱きしめられた。
『何してるの、千冬』
「俺………ずっと後悔してた、あの日のこと。お前の家のこととか環境とか、俺が一番知ってたはずだったのに。やっちゃいけねぇことした。イライラして八つ当たりなんて子どもすぎた………っ、本当にごめん、」
『悪いのは千冬じゃなくて私だよ。あんなこと言わなきゃもしかしたら今でも一緒にいれたかもしれないのにね。』
「違う！！Aが悪いことなんて何もなかった、重いとも思ったことねぇ。俺は、今でもお前のこと、」
『千冬、それ以上言わないで。』
「っ、なんで………！」
『言ったでしょ、私と千冬じゃ生きてる世界が違うの。もう一緒にはいられないよ。』
その言葉を聞いてしまったら、ダメなんだ。
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作者名：ゆ | 作成日時：2023年9月29日 21時
