6.登校中の偶然 ページ6
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目覚ましの音で目が覚めた。
『朝………学校、行かなきゃ』
夜の仕事をしているものの、私は専門学校へ通っているから朝はずっと寝ているってわけにもいかない。なんでこんな生活続けてるんだろう。寝不足だし、キモいおっさん相手にしなきゃいけないし、学校の費用だって伯母さんが出してくれてる。
別にわざわざ高時給の仕事をする必要もない。ただ愛されたい、それだけのことで。千冬と別れてから他の男と付き合ったことだってあったけれど、違った。一ミリもドキドキなんてしなくて、下心見え見えな男が私に近付いてくるのが気持ち悪かった。私は多分、恋愛なんて一生出来ないんだ。否、するつもりもない。
「おーA」
『圭介、最近よく会うね。』
「まぁ学校の方向同じだからナ。」
圭介は千冬が社長を務めるペットショップで働きながら、獣医を目指すために大学に通っているらしい。その上、万次郎のお爺さんである万作さんに頼まれて、佐野家道場の稽古をつけにいったりもしていると聞いた。まぁさすがに忙しくて、それはたまにだそうだが。
「なぁ、」
『ん?』
「千冬と仲直りしねぇの」
『………出来るものならとっくにしてるよ。私は重いって振られた側なのよ?仲直りしたいなんて言えるわけない、もう私は千冬に嫌われたんだから。』
「じゃあもし千冬が目の前に現れたらどうする?」
『何?今日はすごい質問してくるじゃん。』
「聞いてんだから答えろ。」
『そうだね、千冬がもし私のことを嫌ってなくて、目の前に現れたら………そりゃ仲直りしたいよ。あの日のことを謝りたい。嫉妬とか束縛なんて、私が子どもすぎた。』
「フーン。」
『聞いといて何よ、その反応。』
この質問に何の意味があるのだろう。そんなもしもの話があるわけない、ましてや7年間ずっと偶然ですら会わなかったのにいきなり目の前に現れるなんてありえない。本当に千冬と再会出来たら、それは最早奇跡だ。
『私、こっちだからもう行くね。』
「おーまたな。抱え込みすぎて、あんま無理すんじゃねーぞ。」
『何の話よ、じゃあね。圭介も学校頑張って。』
本当は気付いていた。一虎くんと電話した時、圭介もいたこと。だから心配してくれてることも。
そろそろキャバ、辞めようかなぁ………。
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作者名:ゆ | 作成日時:2023年9月29日 21時