12.一緒にいたい ページ12
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『………そんな話するなら、私帰るから。』
「それも無理。」
『は?』
「俺、今日お前と会うのどんだけ楽しみにしてたと思ってんだよ。簡単に帰らせるわけねーだろ。」
『何、ホテル行きたいってこと?』
「ハァ!?!?ちっっっげぇよ、バカ!!!少しでも長く一緒にいたいってことだわ!!!」
『………!』
い、言い方が悪いでしょ、今のは。簡単に帰らせるわけないって、男とデートしたらみんな言うもの。それで家か、ホテルに連れてかれて、満足そうに帰る。ここ数年で男なんて、多少顔が良くて胸がありゃ誰でもいいんだって思うようになってしまった。千冬がその辺の男と違うのは分かっているのに。
「つーかその言い方、ろくでもねぇ男引っ掛けてたろ。そんな奴と俺を一緒にすんな。」
『ごめん………』
「Aのこと本気で好きだから、ちゃんともう一度好きになってもらえるように頑張る。そんで付き合えるまでは手出さねーよ。」
頑張らなくたって、もう好きだよ………なんて、言えるはずもなく。私は曖昧な返事をした。
「Aさ、前に俺とは住む世界が違うって言ってたじゃん。」
『…うん、』
「それはなんか違くね?確かに昼職と夜職じゃ頑張り方もメンタルの削られ方も全然違ぇのかもしれねーけど、」
『違う。』
「え?」
『そういうこと言ってるんじゃない。この世界で生きてきた私は汚いの。私を好きだと言ってくれる人にこんなこと言うのは……どうかと思うけど……っ、わたし、知らない人とえっちしてお金もらってるんだよ。もう千冬が知ってるわたしじゃないの!!』
「汚くねーよ。」
『え』
「お前は汚くねぇっつってんの。つーか、汚ぇのはAの気持ち利用して、欲発散してるゲスいおっさん共だろ。それが辛いなら今すぐやめて俺ん所来い。」
なんで、あなたはいつもそうなの。
私が辛い時、いつも手を差し伸べてくれる。
家族に捨てられてひとりぼっちだった時も、家を追い出された時も、伯母さんに怒られて落ち込んでた時も、学校で虐められてた時も、いつだって千冬は私のそばにいてくれた。そんな風に優しくされたら、その手を取ってしまいたくなる。
「俺、一応社長だからさ。お前一人くらい養えんの。社長舐めんなよ?」
『っ………ち、ふゆ、』
もしも、その手を取ってもいいのなら。
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作者名:ゆ | 作成日時:2023年9月29日 21時