2.幼なじみ ページ2
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私には親がいなかった。
いや正確には、捨てられた。
父は私が生まれてすぐに家を出て行った。そう聞いている。そして母の方は────
「また迎えに来るから。」
そんな、呪いの言葉だけを残していなくなった。
「お前、一人なの?」
『………だれ、』
「オレは松野千冬!5歳だ!」
『わたしは、葵A。歳は同じ。』
これが千冬との出会いだった。
母に捨てられ、自動保護施設に放り込まれ、周りに馴染めずにいた私はよく抜け出しては怒られていた。とんだ問題児だったと思う。そんなのは、もう慣れたものだったけれど。
時々施設を抜け出しては千冬と話して、段々仲良くなり始めた頃、母が死んだらしい。そして伯母が私を迎えに来た。愛してくれたわけじゃなかった。だけど、朝昼晩三食きちんと食べさせてくれたし、学校にだって行かせてくれた。それだけで満足だった。
「あれ、Aじゃん!!」
『千冬!?』
「同じ学校だったんだな、知らなかった」
『私も知らなかった。よろしくね』
入学した小学校は千冬と同じで、それから私は常に千冬と一緒にいるようになった。
「……あのさ、A」
『ん?』
「Aのことが好きだ。俺と付き合ってくんね?」
漫画のヒロインみたいに鈍感なタイプではなかった。千冬が私を好いてくれていることは、なんとなく気付いていた。
中学生になって告白をされた。ヤンキーのくせに私にだけやたら優しい所とか、クシャッと笑う顔が可愛い所とか、私も好きだった。誰彼構わず喧嘩売りに行くからいつも一緒にいる私は狙われやすかったけれど、千冬は必ず私を守ってくれた。そして付き合うことになった。
中学を卒業したら、高校は同じがよかった。高校卒業して、お互い社会人になってもずっと一緒にいたい。そう思っていた。だけど、幸せは長くは続かなかった。
『ねぇ千冬、さっき一緒に歩いてた女の子誰?』
「知らね、つか見てたのかよ」
愛されたい、ただそれだけだった。
だって誰にも愛されたことがなかったから。
『私のこと本当に好き?』
「お前最近どうした、そういうの重いんだけど。」
『だ、だって……!しょうがないじゃん!女の子と歩いてたら不安にもなるよ!!』
「急にデケェ声出すなよ。そんなに嫌なら別れる?」
『っ………!私のこと嫌いだったなら、言ってくれればよかったのに。結局千冬も一緒なんだね、私のこと捨てるんだ。』
そのまま喧嘩別れして、終わった。
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作者名:ゆ | 作成日時:2023年9月29日 21時