僕はこの夏、君に溺れる。【赤葦京治】

Drowning in you-5 ページ7

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「ちぇー、つまんねーの」


「まぁでも昼休み2人きりだったら彼女と思うわ」


「だろ？」




彼女ではない、と言い続けた俺に

負けたのは先輩。


でも事実だし。


付き合ってなんかない。


友達以外の関係は何もなくて。



そう、考えると胸がちょっぴり苦しくなる。




「じゃああの子、なんていうんだ？」


「……教えません」


「え、ケチ！」


「本人に聞いてください」




なんだか、教えたくなくて。


Aをいろんな人に知られるのが怖くて。


独占欲……なのかもしれない。


しかも木葉さんに教えたら

Aに余計なことを教えそうだし。


……うん、やっぱ教えない。




「何？取られたくねーって感じ？」


「え、いや、別に……」


「ほほー？」


「……なんですか」


「いやいや？赤葦にも春がきましたなーと」



春……？


俺にも春がきた……？


なに、言ってんの。


別に、そういう訳じゃないし、

そんな気持ちないし。




「名前教えてって言ったらめっちゃ嫌そうな顔してた」


「そりゃ……教えたくないですもん」


「なんで？」




……言えない。


知られるのが怖いなんて、

知られるのが嫌だなんて、

絶対に言えない。


言ったらどうなるかなんて目に見えてる。




「おい木葉ー、あんまからかうなって」


「いや、思ってたより赤葦純粋だなーってな」




純粋とか……。


子供じゃないし。

……実際はまだ子供だけど。




「まぁ悩めよ、赤葦」


「……意味がわかりませんよ」





ポン、と肩を叩いて部室を出ていった。


それ以外の3年生もほとんど出ていって。


部室には俺を含めて数人しかいない。




……なんだよ、木葉さん。


意味わかんないし。




俺はAのこと友達としか思ってない。


それは事実だ。


愛しくて、大切で。


そんな、俺にとってはすごく大事な子。




恋愛とかありえないよ。


そもそも俺は恋愛というものをしたことがない。


恋愛がどんなものかはわからない。


でもこの気持ちは恋愛ではなく友情。




別に自分に嘘をついているわけじゃない。


それでも。



ぐっと痛む胸には

気づかないふりをした。




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