重岡くんとダイキ【赤】 (ページ10)

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「送ってったるから、帰ろ」

『へ？』

「ほら。

はよ帰らな暗くなんで」

ぐいっと掴まれた手首。

触れられたとこだけ熱を持つように熱くなる。

…なんて表現、小説で飽きるくらい見たけど、

実感したのは今日が初めて。

ぐんぐん進んでく重岡くんは、いつもと違う。

……例えるなら、重岡くんじゃない人って感じ？

いや、それ例えてないか。

強引で、重岡くんとは正反対の人格…みたいな。

あっキャラか？そういうキャラもやってみようみたいな？

「…家、どっちなん？」

『えと、3駅先の、上重駅で…』

「ん、わかった」

それから会話は途切れて、

電車に乗って重岡くんは窓の外を見つめてる。

相変わらず手首はやんわり、

けど痛くない程度に掴まれたまま。

オレンジ色の夕陽に照らされても、

いつも俯いてる顔はまっすぐ前を見つめてる。

分厚いメガネの奥に潜んでる澄んだ瞳をぼんやり見ていたら、

夕陽を見てたはずのその目線とぶつかって

まゆげを少し上げて、ん？って顔をする。

その仕草が、やけにドキドキして、

首をブンブン振った。

『あ、…私の家ここ。

送ってくれてありがとうね』

「…おん、じゃあ。また明日。

おやすみ」

柔らかく口角を上げ、頭をさらっと触られて、

私に背を向けてちょっとだるそうに歩いてく。

『っ……わー…』

玄関で腰が抜けて、ズルズルと壁伝いに座り込んで顔を覆った。

重岡くんて、本当はああいう人なんだ…

地味で陰キャっぽいけど、

優しくて、意外とグイグイ強引にいく。

その2つのギャップを使いこなすっていうか。

……なんていうか、簡単に言うと

『好き、かも』

ちょろいなって自分でも思う。

けど、重岡くんのあの顔を真っ赤にした表情と、

さっきの帰る前の口角を上げた顔。

頭の中で思い出すたびに、胸がきゅんとした。