重岡くんとダイキ【赤】 (ページ1)

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「Aおはよ」

『おはよ～』

私は桐山A。

どこにでもいる超絶普通の高校３年生だ。

朝、いつもと同じ時間の電車に乗り、

学校の最寄り駅から元同じクラスの女の子と

適当に話しながら学校へと向かっている。

「うわ、」

話してた女の子の1人が突然嫌な顔をしたので目線の先を辿ると

見つめる先にいるのは、

「重岡だー…最悪、朝から暗いもの見ちゃった」

重岡大毅、彼がその名前。

今日も今日とて、彼は猫背のまま、黒のリュックの背負う部分をぎゅっと両手で握って歩いている。

黒のピカピカに磨かれたローファーから見える白靴下。

捲らずにボタンがきっちり留められたYシャツ。

分厚いレンズのメガネ、ボサボサの頭。

彼を形容するのに1番ぴったりな言葉は

「陰キャの手本すぎ(笑)」

そう、陰キャだ。

人間には陰と陽、二種類の人間がいて

彼は典型的な陰。

「本当に暗いよね、アイツ。」

「それな。いるだけでその辺の雰囲気暗くなるし」

「てか眼鏡分厚すぎて何考えてんのかわかんないし！」

キャハハ！と笑う周りの子達をよそに、

私は猫背を見つめていた。

本当は「わかんない」じゃなくて、わかろうとしてないんじゃないの？

…なんて思ってても言えなかった。

結局彼女たちの中の彼の評価よりも、可愛いのは自分。

適当に愛想笑いをして、そのままローファーのつま先を見つめた。