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コツコツとヒールの音を鳴らしながら、
彼女が近づいてくる。
呆然とする彼の口から「なんでおんねん」と
心の声が漏れた。
「来たらあかんかった?」
「や、そういうことちゃうけど、」
チラッとこちらに目を向けた彼女は、
クリクリお目目で私を見つめて
「あっ!この子やろ、流星の元カノちゃん!」
「ルカ、」
「流星からな、よう聞いとったで。
Aちゃん言うんねやろ?」
"ルカ"さんが、彼の今の彼女だということは
すぐにわかった。
でも「ルカには関係ないやろ」と
私の手を引っ張り歩き出す彼は、複雑な表情をしていて。
なんでよ。せっかく、ニューヨークにいるはずの彼女が来てくれたんじゃない。
そう、思っているのに
彼の手を、振り払うことができない。
それは、彼のことが忘れられないから
じゃなくて、
「待ってや、流星!
私も仲良くなりたいねんって、」
"元カノちゃんと!"
"元カノ"と繰り返す彼女のことを、恐れているからだ。
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このお店に来るのは二度目なのに。
一人だと、やっぱり勇気がいるもので。
だけど、思い切って扉を開けば
そこはいつも通りキラキラと輝いていた。
「「いらっしゃいませ」」
『あの、こたきっています?』
若いボーイさんたちは、ピンときてないようで
慌てて「じゃなくて、リュウセイ」と言い直した。
「あぁ、リュウセイさんなら、今他のお客様から指名入ってて…」
『待ちます』
案内された席に座れば、すぐにヘルプの方が来てくれたけど、
「Aちゃんっていうんだ」
「可愛いじゃん」
「疲れた顔してる。大丈夫?」
正直、私には合わないと思った。
客を褒めておけばいい、みたいな。
そんな感じ。
だからNO.1になれないんだよ、なんて考えながら
作り笑顔で相槌をうつ。
癒してもらいにきてるのに、これじゃ私が話を聞いてるみたいだなって、ちょっと面白かった。
「ほら、リュウセイさん人気じゃん?」
『そうらしいですね。』
「だからさ、あんま時間とれないと思うんだよね」
『はぁ。』
完全に、客を横取りしようとしているな、と。
人の客をとらないとやっていけないなんて
非常に無様。
「どう?Aちゃん。俺にしない?」
おぉ、ビンゴ。
『するわけないでしょ』
「するわけないやろ」
同時に二人から否定されちゃって、可哀想ね。
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赤ずきん(プロフ) - mさん» 返信遅くなってしまい、本当に申し訳ないです。長文の感想、ありがとうございます。他の作品も読んでくださっているんですね!藤嫁のあの文は、少しでも頑張っているジャス民さんのお力になれればと、必死に考えたものだったので、そう言っていただけて嬉しいです (2019年1月26日 15時) (レス) id: 651c6f2efb (このIDを非表示/違反報告)
m - 感想長くなってしまい、ごめんなさい。これからも、赤ずきんさんのペースで大丈夫ですので!お話楽しみにしております。お体にお気をつけて頑張って下さい。 (2019年1月4日 23時) (レス) id: 1a2ae0eb63 (このIDを非表示/違反報告)
m - 初めまして!小説読ませて頂きました!赤ずきんさんの書く小説がドンピシャで大好きすぎてファンになりました!藤嫁こた専も読ませて頂きましたが最高でした!何よりも、藤嫁の最初のページの絶える事のない悩みを抱えつつ〜のコメントがとても胸に響き、泣けました。 (2019年1月4日 23時) (レス) id: 1a2ae0eb63 (このIDを非表示/違反報告)
赤ずきん(プロフ) - 紫春さん» 1コメ嬉しい〜!ありがとう!!いやいや、天才ではない笑 でも、今までのよりはちょぴっと大人っぽいよね笑 頑張る!無理してないって!笑 応援ありがと! (2018年12月16日 21時) (レス) id: 651c6f2efb (このIDを非表示/違反報告)
紫春(プロフ) - 読んだ!!え、何天才なの?めっちゃドキドキした!!続きが気になって仕方ないんだけど!更新楽しみにしてる!でも、無理しないこと (2018年12月16日 20時) (レス) id: 8db4ba7a0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤ずきん | 作成日時:2018年12月16日 19時