Night out

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「名前は？」


『A』



連れてこられたホテルは、案外綺麗で広くて
へぇ、この人意外と稼いてるんだ、って。

あと、さっきから気づいたことが二つ。



「なんやねん、そんな見つめて」


『ううん、別に』




出会った時、よく確認しなかった彼の顔面偏差値は
人並みレベルじゃないってこと。
本当によく、整っている。
これなら寄ってくる女も多いだろうに、なんて。



それと、もう一つ。




『関西弁、なんだ』


「せやで」





「いや？」と問いかけた彼の、細長くて綺麗な指が
私の長くおろした髪を耳にかけた。

さすが。誘い方も慣れている。



『珍しいなって思っただけ』


「まぁな」


『あたし、関西弁好きだよ』









彼の瞳を見つめた。






この嘘が、バレないように。








ぱっちりとした二重と目が合う。

見つめあった時間は、
長いようで、きっと3秒くらいだろう。









ふっと笑った彼が、私の後頭部を引き寄せ


唇にキスを落とした。








絡め合うように、互いが互いを求め合うように。
酸素が足りなくなって、クラクラする感覚が心地良い。






服を脱がせる少し強引な手つきも、


混ざり合う体温も、


漏れてしまう声も。



ふたり、快楽を求める時間ほど
楽しい時はない。








ただ、





名前を呼ばれる度、絶対に速まることはないと
思っていた鼓動が跳ねたのは、




ほんの少しだけ、彼とあの人が重なってしまったから。








似ているのは、コテコテの関西弁と
高い身長くらいなのに。





それでも、あの頃を思い出すのには
十分すぎた。







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