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40分も待ち続けた私の元にやって来た彼は、
10分後また他のテーブルに呼ばれてしまった。
去り際、耳元で囁かれたホテル名。
先にそこへ向かえば、もう部屋は予約してあって。
1時間後に現れた彼の苗字を知ることが出来たのは良かったと思う。
『小瀧っていうんでしょ。』
「よおわかったな。」
『ご予約の小瀧様でいらっしゃいますね、って。』
「あぁ、せやったわ。」
ベッドに寝転び、右腕で目を覆うようにする彼の元へ行き、ベッドの下からその様子を眺める。
妙に整っていて、少し悔しい。
『疲れたの?』
「んー」
『2番テーブルの鈴木さん?』
「常連やから、愛想よくせなあかんねん」
『ふーん』
ばっと腕をどけ、起き上がった彼にびくりとする私を見て、「よし、やろか」と意気込む。
『なに、その始め方』
「結果やれればなんでもええやろ」
『まぁ、そうだけど』
これぞまさに、遊び人たちの会話だと思う。
流れるようにキスをして、そのまま深く落ちていく。
不思議と、明後日帰ってくる彼のことは忘れていた。
この前のように、彼と小瀧を重ねることもなかった。
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「これ」
翌日の別れ際。
差し出された紙を受け取れば、得意そうに「俺からやるなんてレアやで」なんて言う。
『なんで』
「毎日相手見つける手間省けて、お互い楽やろ」
一瞬、断ろうとした。
これを貰うということは、彼とそういう関係になってしまうということだ。
たとえ、体だけだとしても。繋がりができてしまう。
特定の男と繋がりを持たないため、こうして夜遊びをしているのに。
でも、何かの役にたつかもしれないなんて容易な考えで、ダッフルコートの右ポケットにそれをつっこめば、
彼、口角上げるから。
不覚にも、かっこいいなとか思ったり。
『連絡、しないかもよ』
「そこら辺の輩とやるくらいなら、俺とやれや」
「小瀧だって怪しい人かもしれないじゃない」
曖昧に笑った意図はわからないけれど、
「なんかあったら連絡せぇよ」なんて彼氏みたいな言葉投げかけられて、
それにまた「うん」とか答えちゃった私も私で、相当狂っていたんだと思う。
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赤ずきん(プロフ) - mさん» 返信遅くなってしまい、本当に申し訳ないです。長文の感想、ありがとうございます。他の作品も読んでくださっているんですね!藤嫁のあの文は、少しでも頑張っているジャス民さんのお力になれればと、必死に考えたものだったので、そう言っていただけて嬉しいです (2019年1月26日 15時) (レス) id: 651c6f2efb (このIDを非表示/違反報告)
m - 感想長くなってしまい、ごめんなさい。これからも、赤ずきんさんのペースで大丈夫ですので!お話楽しみにしております。お体にお気をつけて頑張って下さい。 (2019年1月4日 23時) (レス) id: 1a2ae0eb63 (このIDを非表示/違反報告)
m - 初めまして!小説読ませて頂きました!赤ずきんさんの書く小説がドンピシャで大好きすぎてファンになりました!藤嫁こた専も読ませて頂きましたが最高でした!何よりも、藤嫁の最初のページの絶える事のない悩みを抱えつつ〜のコメントがとても胸に響き、泣けました。 (2019年1月4日 23時) (レス) id: 1a2ae0eb63 (このIDを非表示/違反報告)
赤ずきん(プロフ) - 紫春さん» 1コメ嬉しい〜!ありがとう!!いやいや、天才ではない笑 でも、今までのよりはちょぴっと大人っぽいよね笑 頑張る!無理してないって!笑 応援ありがと! (2018年12月16日 21時) (レス) id: 651c6f2efb (このIDを非表示/違反報告)
紫春(プロフ) - 読んだ!!え、何天才なの?めっちゃドキドキした!!続きが気になって仕方ないんだけど!更新楽しみにしてる!でも、無理しないこと (2018年12月16日 20時) (レス) id: 8db4ba7a0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤ずきん | 作成日時:2018年12月16日 19時