31［完］ ページ32
「こういうのは男から言わなあかんな」
と言って、じゅんちゃんは軽く咳払いをし、姿勢を正した。
つられて私も背筋を伸ばす。
「A」
「…はい」
「俺と、もう一度付き合ってください。もう、お前を泣かすようなことはしやん」
「…じゅんちゃんっ」
涙が止まらない。
こんな日が来るなんて、5年前のあの日は思ってもみなかった。
新幹線のホームでじゅんちゃんを見送ったあの日から5年。
あの時の自分に教えてあげたい。
5年後、私はちゃんと笑えてるよって。
涙が止まらない私を見て、苦笑いをしながら涙を拭ってくれるじゅんちゃん。
「…んで、答えを聞かせてくださいな？」
と、意地悪な笑顔で言う。
「そんなん言わんでもわかるやん…」
「こういうのはちゃんと言ってもらわな、な？」
「じゅんちゃん、おかえり。こちらこそよろしくお願いします」
と言うと、さらに涙腺が壊れてしまって。
じゅんちゃんに抱きつきながら思いっきり泣いてしまった。
「…ん、ただいま」
--
「じゅんちゃん送ってくれてありがとう」
と言い、じゅんちゃんの方を見ると、私の家を見て眉を顰めるじゅんちゃん。
「えっと…じゅんちゃん？」
「…うん。A、引っ越そか」
「えっ？」
何か自分の中で決めたのか、強く頷きこちらを見てそう言ったから、つい驚いてしまった。
「オートロック無しの家に大事な大事な彼女住まわせられへんやん」
「えぇ…でも家賃…」
「わかった、一緒に俺の家住もか」
「えぇっ！？」
「何、嫌なん？」
「嫌じゃ無いけど…急すぎひん？」
「なんも急やない。ええから、黙って俺についてきたらええやん、ちゃんと守ったるから」
どうやら、まだまだ忙しくなりそうだ。
-fin-
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作者名：とらい | 作成日時：2019年6月18日 22時
