漂流 (黄) (ページ20)

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「お待たせ」

指定された時間にお店に行くと、彼は先に着いていた。
「ごめんね、待った？」
「いや、全く待ってないよ、気にせんといてな」

わかってる。彼は、待っていても絶対に「待ってない、今来たところだ」と言う人だ。
本当に優しい人だと思う。

「それにしても、Aが東京に転勤になっとるなんて思わんかったわ」
「それ昨日も言ってたね？笑 2年前かな？」

じゅんちゃんと別れてだいたい3年くらい経った頃。
私は、じゅんちゃんと会えない寂しさをぶつけるかのように仕事に打ち込んでいた。

その甲斐あってか、大きなプロジェクトを任され、最初はその件で東京に出張に行っていたが、だんだん東京支社のお偉いさんに気に入られたらしく、東京支社長から直々に異動命令が下った。

その事をじゅんちゃんに話すと、
「凄いなあ。Aは相変わらず頑張り屋さんやんな」
と褒めてくれた。人に褒められるのはもちろん嬉しいけど、じゅんちゃんに褒められるとやっぱり特別嬉しくなる。

「ありがとう。でもじゅんちゃんも頑張ってたやんな、仕事が忙しくなってきちゃってたから全部は見切れてへんかってんけど、それでもラジオ聴いたり、お昼の番組見たりしてるで、凄いなあじゅんちゃん」
と言うと、照れ臭そうに笑った。