漂流 (黄) (ページ13)

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「…嘘でしょ」

ついてない日は、とことんついてない。
猛ダッシュで逃げた時に、どうやら財布を落としてしまったようだ。

マジかよ、こんなことあるの？
普通に出社していればこんなことには…

平静を装って置かないと。とりあえずさっさと仕事終わらせて定時で帰らなくては。

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仕事を押し付けようとする上司を『話しかけるな』オーラで退散させ、後輩は全部サチに押し付けた。

…マジごめん、今度焼肉奢る。だから、そんなに恨みがましい目で見ないで、お願いだから…

「おつかれさまでしたー…」

いつもの様にだるそうに挨拶をして会社を出たら。
見慣れない高級車。

そこから降りて来たのは、

じゅんちゃんだった。

「…げ」
「げ、ってなんやねん。笑」

付き合ってた時と変わらない笑顔で彼がポケットから出したのは。

「これ、なーんだ」
「…あ、私の財布」

でもなんでここがわかったの？

「A、まさか東京に来とるなんて思ってへんかったんやけど、東京に住んどるってことは、転勤になったんやろなって思って、調べちゃった」

そう言って舌を出したじゅんちゃん。
…悔しいけどかわいい。
じゃなくて！

「え、覚えてたの？」
「おん」
「…別れたの何年前…」

そうだ、この人は頭が良かった。頭の回転が早くて、フットワークも軽い。記憶力もすごく良かったっけ…

「財布を返して欲しければー、今夜付き合うこと！」
「えっ」
「えっ、じゃないわ！笑財布がどうなってもいいのかー！」

子供か。メンバーの性格が移ったの？