漂流 (黄) (ページ24)

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「でも、そのダイオウグソクムシ君だけは知らなかったんだよねー、めちゃくちゃ好きだったんじゃん、なんなら今も好きなんじゃないの？」
「わかんない、ていうかダイオウグソクムシ君て」
「じゃあ、名前言える人なの？」

うぐっ。本当に、この子はエスパーか。

「言えない人だよね、まぁAの事だから悪い人ではないんだろうけど。」
「ごめん…」
「いいのいいの。いつか紹介してよね、すみませーん！タン塩とビール！」

まだ頼む…？そろそろ財布が心配だし、

「サチ、お願いだからそれで最後にして…明日も仕事でしょ？ほら、あんまり遅くなるとさ、」
「しょうがないからそういうことにしといてあげる、今度こそ叶うといいね。いつでも相談乗るから」

と言うと、私の肩を優しくポン、と叩いた。

サチは優しかったけど、サチの胃袋は優しくなかった。

「お会計、13,000円になります」

「サチ、食べ過ぎ…」
「ごめんって、今度何かあったら奢ってあげるから許して♡」

泣きそう。

財布がすっからかんだ。

--

「おはざまーす…」

今日は、バッチリメイクはしない、いつも通り。
イレギュラーな事はもう懲り懲りだから。

「おお、Aが戻ってきた」

開口一番、サチがそう言った。

「ちょい、何それ」
「え、だって先週の金曜はバッチリメイクだったじゃん？昨日も私が焼肉誘ったからそこそこのメイクしてたし」
「で？今日は？」
「オッサン女子、Aの帰還～！いえーい！」

いえーいじゃないわ。
とりあえず手を出されたからハイタッチには応じるけど、誰がおっさん女子だ。

「でもさー、せっかく良さげな人が出てきたのに、そのメイクもそうだし、服もなーんか微妙なんだよねー」

サチが、私の全身を下から上まで見てからそう言った。

「どこが」
「いやまずあんたパンツスーツじゃん、常に！」
「だって楽だし」
「女子力高めるなら、まずはスカートでしょ！」

スカートか…
東京に転勤になってから、履いてないな。

「確かにスカートの服無いかもしれない」
「でしょ！？私、休みの日にAがスカート履いてるところ見たことないからね」

取り戻せ、私の女子力。