WESTちゃん短編集 その2

「憧れ」(青×緑) ページ46

(緑)







女の子みたいに。


可愛らしく。


可憐に。


……………なんで、そんな風にせなあかんの。


男5人兄弟の末っ子に生まれた俺は、生まれた時から可愛らしくいるようにと育てられた。


女の子が欲しかった母の我儘。


ギターがしたかったけどバイオリンを習っていて、


文化祭で女装をしたら可愛い！と喜ばれて、


にこにこと可愛らしく微笑めば嬉しそうにされた。


いつしか母の操り人形のようになっていた。


……でも、でも本当は。


ロックが好きで、たくさんピアス開けたくて、


刈り上げと金髪に憧れてて、ヒョウ柄の派手なシャツが着たい。


こっそりドラムを習いに行って多少の反抗をしてみたけど、心は満たされへんかった。








とある日の放課後。


親に黙ってこっそりと行ったライブハウス。


お目当てのバンドはもちろん良かったけど、それ以上に…


シークレットゲストとして来ていたバンドに釘付けになった。


ヴォーカルは彫刻のような美しい顔立ちに綺麗な金色の長髪。


何もかも見透かすような色気のある瞳に、相反するような可愛らしい口元。


身長が高く、モデルのようにスタイルがいい。


なんとも言えない不思議で妖艶な雰囲気。


誰しもが彼が出てきた瞬間、"綺麗"と思ったやろう。


そして曲が始まり彼の声が聴こえた瞬間。


「……!!」


低音の耳障りのいい男性らしいけれど甘くとろけるような声に夢中になった。


身体中を巡り支配するような1度聴くと忘れられないそんな声。


何もかもが魅力的すぎて。


このバンドのことも、彼のことも全く知らないのにすぐに虜になった。


惹き付けられた。


まるで一目惚れをしたかのように音を立てる心臓が五月蝿い。


家に帰ってからバンド名や彼のことを調べてみたがほとんど情報はなく、SNSにも写真は上がっていない。


ヴォーカル Ryusei


ギター Nozomu


ベース Takahiro


ドラム Junta


キーボード Daiki


かろうじてメンバーの名前が書いてあるくらい。


淡々と新曲が更新されているだけ。


顔ではなく音で勝負していたいのかな。


見に行った人だけが知るビジュアル、ということになる。


その秘めたる魅力にさらに惹き付けられた。


もう一度、見たい聴きたい…。


頭の中はRyuseiの魅力的な歌声と美貌でいっぱいやった。











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